初めて技術力評価会を経験したエンジニアにインタビュー

CARTA HOLDINGS(以下、CARTA)は、株式会社サイバー・コミュニケーションズ(現CARTA COMMUNICATIONS、以下、CCI)と株式会社VOYAGE GROUPが経営統合し発足しました。「技術力評価会」は旧VOYAGE GROUPで長らく運営されてきましたが、2022年にCARTAの技術力評価会として進化しました。今回は、CARTAとして初の技術力評価会が実施され、初めて経験したCCIのエンジニアたちに参加してみて実際にどうだったかインタビューしてみました。

インタビュアー:鈴木健太 Twitter ID @suzu_v(写真左) 株式会社CARTA HOLDINGS 執行役員CTO / 株式会社fluct取締役CTO。社内では「すずけん」と呼ばれる。「みんなのGo言語」「データ分析基盤入門」共著者。ウェブ技術全般に明るい。ポッドキャスト「ajitofm」をやっています。

インタビュイー:阿部慎也(写真中央) 株式会社CARTA HOLDINGS / 株式会社CARTA COMMUNICATIONS テクノロジーDiv. インテグレーショングループ アドテクノロジーサービスチーム / CTO室技術広報を兼務 社内業務サポートツールなどの要件作成や運用サポートなどをやっています。

インタビュイー:石井美希(写真右) 株式会社CARTA HOLDINGS / 株式会社CARTA COMMUNICATIONS テクノロジーDiv. アプリケーショングループ 開発第1チーム / CTO室技術広報を兼務 社内システムの開発や運用をやっています。

CARTA HOLDINGSの技術力評価会とは

技術力評価会とは、CARTAにおけるスキル評価のための制度です。CARTAでは半期ごとに評価が実施されており、定期評価・スキル評価の双方から総合的に判断しています。

旧VOYAGE GROUPでは2011年から実施している制度です。

技術力評価会は、昇給・昇格の評価軸の1つである能力(エンジニアであれば技術力)を評価するための会です。能力は、成果物だけをみて評価するのではなく、成果物を通した被評価者の考え方を技術力として評価しています。

この半期は4,5月に評価会を実施しました。その様子をインタビューを通じてお伝えします。

技術力評価会 もご覧ください。

初めて技術力評価会に参加してみて

鈴木健太 (以下、すずけん):今回、CARTAとして初めて技術力評価会を実施したわけですが、 CCIのメンバーにとっては初めての評価会でしたね。実際に評価を受ける被評価者として参加してみてどうでしたか?

阿部慎也 (以下、阿部):実際に始まる前までは、技術力評価会という名称もあってかちょっと構えてしまった感じがありましたね(笑)でも、実際やってみたら当日の90分も長い時間だと思っていましたが、それを感じず、あっという間でした。

今回は、開発というよりプロダクトマネジメントの側面を評価してもらったんですが、評価者からその立場に踏まえた上でのポジティブなフィードバックをいただけたし、普段一緒にやっているCCIのチームメンバーとはまた違った視点から意見がもらえたのは良かったですね。

すずけん:今回でいうと阿部さんの評価者(2人中1人)は、TechBlogでも対談記事が先日出たDIGITALIOの「をいで」さんですね。部署やチームを横断して、違う目線で見てもらえるという面がやっぱり大きいですよね。

阿部:そうですねー。

すずけん:石井さんはどうでしたか?

石井美希 (以下、石井):そうですね。まず最初に技術力評価会をやろうとなった時に、テーマ選びをどうしようかなというのが悩んだポイントですかね。元々CCIのアプリケーショングループでは「技術共有会」という自分が携わっているプロダクトや技術について知見を共有する会があったのですが、今回の技術力評価会とは主旨も違ったので、テーマ選びや準備は大変だったなと思います。でも、発表に対して評価者からフィードバックをいただけたのはかなり大きかったです。技術力評価会で発表した他のメンバーの資料やフィードバックも見ることができたのも勉強になったし、自分へのフィードバックも含めて良かったです。

すずけん:そうですね。技術力評価会では、発表したエンジニア全員の資料や発表に対するフィードバックが、GitHubで社内に共有されていますよね。今回、他のメンバーの資料や評価結果も結構見られましたか?

石井:私は半年前は別のチームに所属していたこともあったので、元いたチームの資料や評価結果も見ました。あと、興味のある発表者の資料も見ました。

すずけん:本当にみんなの資料を見てると時間が溶けますよね。みんな頑張って仕事しているなと思うのと、評価者も評価軸に照らし合わせながら頑張ってフィードバックを書いてくれているので、これを読むだけでも結構勉強になりますよね。

石井:そうですね。

すずけん:今回の石井さんの評価者の一人は、これもまた先日対談記事を出したLighthouse Studioの「えびちゃん」ですね。違う事業会社のメンバーからフィードバックを貰うのはまた新鮮ですよね。

石井:はい。そうでしたね。

評価のフィードバックを受けてみて

すずけん:実際にフィードバックを受けてみて、なにか気づきはありましたか?

阿部:私の場合は、設計する際の考え方についてフィードバックをもらいました。要望を叶えるための設計についてはいろいろ考えていたのですが、それ以外の考慮しきれなかった部分について気づきを貰えました。

すずけん:今回阿部さんは「デスク業務サポート用メール自動転記システムの概要と導入フローについて」というテーマで発表されましたが、具体的にどんなフィードバックがあったんですか?

阿部さんの今回の評価資料より。GitHub上で社内のエンジニアならだれでも閲覧できます。

阿部:今回取り組んだ仕事だと、デスク業務に関するメールを抽出するにあたって漏れが出てしまうと一番問題になります。では、漏れを無くすためにどのようなアプローチを取ったのかといった説明をしたんです。その際に、一部考慮が足りなかった点について指摘してもらい、詳しくアドバイスをもらいました。

あと、当初はデスク業務の課題を解決するためのツールとして利用を想定していたのですが、仕組み自体は汎用的に使えるものになりました。そこで、もっと広く使ってもらうためには?スケールさせるためには?という観点を貰えたのは、気づきとしては大きかったです。

総評

(中略)

総じて、実運用実績も積み重なってきており、運用担当者の実感としても90%程度の手作業が無くなったと感じており、とても良い取り組みだと思いました。 その実績が、より客観的な数値や取りこぼしパターンの列挙・抽出をもって検証されているとなお良いし、更なる今後の改善に繋がるのではと思います。 構想・仕組みはシンプルながら、運用軽減へのインパクトは非常に大きい取り組みなので、今後より進化・普及していくのを期待しています!

評価者が被評価者の状況ならこう考える、こう動く

(中略)

・設計にあたって、サービス利用が拡大するとどこがネックになるか検討してみる
・もし社外に対してサービス化して提供することになったら?

をいでさんの評価レポートより引用(一部抜粋しています)

すずけん:当初はデスク業務チームから要望としてでてきて、それに応えるという意味では実現できていたけれど、より一般化して汎用的に使えるものにするには?という着眼点でフィードバックをもらえたということですね。

阿部:そうですね。(今回のサポート用ツールを)知ってもらえれば使ってくれるチームはもっとあると思います。でも、今回の設計で利用チームが増えた場合、ボトルネックになる作業が出てくるので、そういった点を指摘してもらえたのは良かったですね。

すずけん:これはメールを抽出してから最終的にはスプレッドシートに書き出しているんですよね。データをフィルタリングしてラベリングして、スプレッドシートに出力する仕組みは他の部分でも使えるよねということですね。たしかに、こういったフィードバックがあったのは良いことですね。

阿部:そうですね。

組織を越え、制約を疑えているか?

すずけん:ありがとうございます。石井さんはどうでした?

石井:今回、私が出したのは「lake.biリプレースに伴う方式設計の検討」というテーマで、認証基盤やその開発のフレームワークの検討について発表しました。

フィードバックとしては、技術調査の観点や方法、技術的な内容についてもあったんですが、それだけでなくリプレースに取り組む上では、開発チーム(CCIでは開発とインフラのチームが別れている)という立ち位置を踏まえても、インフラ方面へも視野や関心を広げてやると良いですよというアドバイスがあって、こういった視点の意見はもらったことがなかったのでインパクトがありましたね。

いろいろと制約などがあるなかでよく奮闘していると思いました。

また、これまで慣れ親しんだやり方や技術を、あえて踏襲せずに捨てたり置き換えたりする気概が見えるなど、よりよい方法を模索しつつも、しかし確実にプロジェクトを推進しようとしているところが素晴らしい。

(中略)

自分でゼロからインフラも構築できる(実際にするかどうかは別として)ようになればもちろんそれが理想ですが、そこまで行かなくても、インフラ部隊とコミュニケーションしたり逆提案(要するに、開発部隊や事業的にはこっちの構成がいいのだけれど、といったような提案)ができるくらいには関心を持っていただけるとすごくいいのかなと思います。

えびちゃんの評価レポートより引用(一部抜粋しています)

すずけん:なるほど。今回のテーマ的には認証基盤や開発フレームワークを置き換えたりするわけですが、インフラストラクチャーまで理解を深めていくことで実施するリプレースの精度が上げられるのではないか、というフィードバックですね。

石井:そうですね。これまで開発とインフラの線引きをしっかりやってきたところがあって、そういった部分についてあまり考慮ができていなかったので、今後やっていければと思いました。加えてなんですが、最近チーム内では技術選定を一任されることが多く、技術的に細かい部分について誰かに意見をもらう機会が減りつつありました。今回チームを横断して、色々な意見をもらえて勉強になりましたね。

すずけん:普段からチーム内でも技術選定などについて話す機会はあっても、石井さんに任されていることが多い中で、今回は第三者目線でフラットに意見をもらった。そういう感じだったんですかねー。

石井:そうですね。例えば今回フロントエンドのフレームワークの一つとして開発者の一人からVuetifyが良いのではと上がった時に、私がいいんじゃないかな?といったら、それ以上の意見が出ずに決定したりもしたので、もう少し比較検討できても良かったなと思いました。

すずけん:自分のチーム外のメンバーからなぜそれを選んだの?と聞かれて、それをちゃんと説明するのって実は結構大変ですよね。例えば暗黙的にチームとしてツールに慣れているから選択したというケースもあると思うんですけど、実際にフィードバックを受けてみてどうでした?

石井:チームで考えた結果の選定ではあったんですけど、フィードバックとしてVuetifyを使うならいっそのことこういった形にしても良いのではないか?という対案を出してもらった際に、たしかにそこまでは考えきれてなかったなと、そういったこともあったりしたので、そういう面でいろいろと意見をもらえたのはありがたかったですね。

すずけん:ありがとうございます。二人に今回の被評価者を通した発見や学びについて聞いてきましたけど、CARTAのTech Vision にもあるように「本質志向」って僕らは呼んでいて大切にしていることがありますよね。例えば、普段一緒にやっているチームの中で制約条件だと思っていることがあったとしても、それは本当に制約なのか?とか。このツールはもっと汎用的に広く展開できるのでは?とか、こういった技術選定も考えられるのでは?とか。技術力評価会って、そういったことを第三者目線で素朴に聞いてくれる場でもあるなと思うんですよね。それが得られるというのは良い機会になってるんじゃないかなーと感じました。

初めて評価者をやってみての感想

すずけん:二人とも今回の技術力評価会で初めての被評価者として発表しましたが、評価者としても今回初めてでしたよね。評価者としてはまた被評価者とは違ったプレッシャーもあるし、大変さもあったと思うんですけど、やってみてどうでした?

阿部:そうですね。評価者はすごく難しかったですね。評価される側だと自分のやってきたことを発表すればいいんですが、評価者になると被評価者がやってきたことを読み込んで理解しないといけないですし、難しかったですね。

あと、私が見た被評価者の一人は、出戻りの方だったのでレベルは高くて評価するのが難しかったですね。

すずけん:それはある意味、いやーよくできてますね!となるパターンですね(笑)

阿部:そうなんですよ!よくできてるなという評価になってしまったなと。それから、他の評価者のフィードバックを見ると、気の利いたことや本当に良いアドバイスがされていて、自分も良いフィードバックをしたいけど、なかなか難しいなと。

すずけん:これはよくわかりますね...。評価者をやるプレッシャーってまさにこれで、良いアドバイスできるかな...ってみんなすごく悩む。おおむね(現時点の)評価レポートのフォーマットとして、総評と自分ならどうするかのアドバイスを書きますけど、本当に良くできていてアドバイスが難しいなというケースはありますね...

今回の評価レポートのテンプレート

阿部:なるほど。そうなんですね(笑)

評価者をやる難しさと楽しさ、評価者のスキルとは

すずけん:石井さんはどうでしたか?

石井:今回2名の評価をやったんですけど、それぞれ別の事業子会社のメンバーでした。それぞれ違う事業とプロダクトでどんなことをやっているのか詳しく知れたのは良かったです。なかなか他の事業会社の具体的なシステムの内容まで知れる機会ってなかなかないので。そう言う意味では事前に資料を読み込んでいる時も楽しかったなと思いますね。

すずけん:なるほど、たしかに。

石井:実際の評価ですけど、やっている事業やシステムの内容、実装を理解して評価するというのは難しいなと思いましたね。

すずけん:何をしているかの理解もそうですし、システムとしてちゃんと作れているかとか、作りの質に対して時間の中でどこまでちゃんと見れるかとか、そう言う難しさはありますよね。

石井:そうですね。他の評価者の方で、実際のソースコードやPull Requestまで見て確認されていたので、そこまで見て評価してるんだすごいと思いましたね。

すずけん:評価者ももちろんこの半年の全てのPull Requestを見ているわけじゃなく、今回のテーマに沿った部分を見ていると思います。でも細かいところまで見て具体的に掘っていくとそこに課題やそのアプローチの妥当性が見えたりするので、見ていけばいくほどわかることがあるんですけど、それをどう探索していくかは評価者の腕前のひとつかもしれませんね。全部見ていくと時間も足りないですし、どこに焦点を当てていくか、ある意味探索的テストのような難しさがあると思いますね。

石井:なるほど。

すずけん:石井さんもいってくれましたけど、普段業務をしていると他の事業会社の自分が作っていないプロダクトついて、聞いたり調べたりする時間ってそんなにないじゃないですか。ある意味、技術力評価会の評価者というのはそれを仕事としてやっていて、評価者としての責任やプレッシャーがありながらも、普段直接業務として自分が関わってない事業やプロダクトを知る良い機会になっているのかなと思いますね。技術力評価会が終わった後、(評価者も被評価者も)みんなで集まって振り返りをしましたけど、KPTの中でみんなからKeepとしてたくさん出てきましたね。

石井:あと、他の評価者がしている質問を聞いて、たしかにその観点から見るともうちょっとこうした方が良いんじゃないかという話も出てきたりしていたので、他の評価者の質問も勉強になりましたね。

すずけん:たしかにありますよね。わかります。このどこに着目するかというのも評価者のスキルですね。技術力評価会は長く続けてきたものですけど、評価者の着眼点というのは1回では身につかないものですし、回数を重ねていくことで各々の着眼点が成長していくものだなと思ってます。今回は、阿部さんも石井さんも初めてだったので、他の評価者の視点を見て真似して学んでいくことにもぜひトライしてみて欲しいなと思います。でも、今回でも二人とも評価レポートをしっかり書いてくださっていたので、本当にありがとうございます!という感じでした。

終わってみて

すずけん:実際に終わってみてどうでした?

阿部:私は面白かったです。事前準備は大変でしたけど、話したことのない事業会社の人からもアドバイスをもらえて良かったなと思います。

すずけん:たしかに、そうですね。今回、CCIメンバーが初めての参加ということもあり、「はじめまして」から始まる回も多かったかなと思います。そこは今回のポイントでしたね。石井さんはどうでしたか?

石井:本当に勉強になったというのが大きくて。たしかに準備は大変ですけれど、率直な感想としてその分の価値はあるのかなと思いました。あと、業務が忙しい時にかぶると大変だな...と思います(笑)

すずけん:これはねー...今回の全体振り返りの中でも準備大変ですねと言うのは、いろんな人にいわれて...。評価資料も1週間くらいかけて作りましたという人もいたというのは聞いていました。技術力評価会には(評価者をサポートする)評価委員やサポーターがいるんですけど、CCIのメンバーは初めての技術力評価会でもあり、同じチームのサポーターが経験者じゃなかった。なので準備の難しさに拍車をかけてしまったなという反省はありますね...。 次回に向けて改善していくポイントではあるんですけど、技術力評価会だけじゃなくて普段の業務の中でも評価会できかれるようなことを意識してもらえればなと思います。 とはいえ、忙しい時期にかぶると大変だとはみんなからいわれるので...。

石井:エンジニアの組織としてやるぞ!とそういう雰囲気になっているのは良いんですけど、実際にテクノロジーディビジョンと関わって仕事をしているチームは別のディビジョンなので、温度差がないかちょっと心配かなと思いました。

すずけん:これは(CTOとしての)僕の仕事ですね。経営メンバーではもちろん話をしていますが、あらためて全社としてやっていくぞという社内広報をしっかりやっていきたいと思います。

ただ思いとしてあるのは、僕たちは単純に時間労働をしているわけではなくて、それぞれの考える力や能力が上がることで、次に使う時間がさらに短くできたり、より良いものが作れたり、あるいは別の仕組みで実現できるから新しく作らなくても良いとか、そういったことができるようになると思っていて、技術力評価会は評価だけでなく育成の仕組みとして大事だと思っています。そこに投資をして、チームや会社としても全エンジニアのレベルが上がっていく方がハッピーだと思うし、回りまわって事業やビジネスもハッピーになると思うので、会社として能力向上への投資を大事にしていることを、CARTA全社員に改めて伝えていきたいと思います。

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