新旧CTO対談 後編「これからのCARTAのエンジニアリング」

f:id:voyagegroup_tech:20220214112143j:plain 2022年1月、CARTA HOLDINGS(以下、CARTA)の新CTOに鈴木健太(@suzu_v、写真左)が就任しました。2012年、VOYAGE GROUP(現CARTA)にソフトウェアエンジニアとして入社し、幅広い領域で開発に従事。「すずけん」の愛称で親しまれてきました。
前CTOである小賀昌法(@makoga、写真右)は、VOYAGE GROUP時代から10年に渡り、エンジニアリングの観点から幅広く経営に携わってきた存在です。

そんな二人が思うCARTAのエンジニア文化とこれから、そしてCTOの役割とは何かについて聞きました。
(記事内の写真は、撮影時にのみマスクを外して撮影しています)

前編はこちら:新旧CTO対談 前編「これまでの10年とCTO交代」

CARTAのエンジアリングの強み、弱み

鈴木健太(以下、すずけん):そうですね。まず強みとして1つ目は、優秀なエンジニアが多いこと。 2つ目に、技術力評価会を通して「大事にしている自分たちとしてのエンジニアリングの考え方はこうだよね、こういう文化があるよね」という事を知ってる人が多いこと。
3つ目に、事業を作る、プロダクトをしっかり作ってちゃんと世の中に出す、という意識がすごく強くて、事業に向かうエンジニアが多いこと。
そして4つ目に、自分の頭で考える習慣があって、今何をするべきか、技術選定はどうするか、どういう順序でプロダクトを作っていく方が良いか、何においても自分事として捉えて考える人が多いこと。 この4点は、資産としても文化や実践していることとしても、すごく強みになっていると思います。

小賀昌法(以下、小賀):コードの1行1行で「なぜそうしたのか」を説明できる必要があるというのが根付いてるのは、これは本当に文化だなって感じますね。

すずけん:これは技術力評価会で「なんでそう作ったの?」と聞かれる中で醸成されてきた文化でもあると思いますが、事業開発している人とエンジニアが別れずに一緒にいて「なんでそれ今作るの?」とか「なんでそういう風に作るの?」という会話を日常的にしているので、エンジニアに限らず日々考えていくのが当たり前になっているんですよね。
毎日フィードバックされるようなものなので、そういう中で「なんで自分がそういう風に作ろうと思ったのか」ということは、すごく考えるクセがついていると思ってますね。

小賀: 何が課題なのか、なぜ作るのか、なぜ必要なのかを理解しているからこそエンジニアから「じゃあ、こうしたら?こういうのどうですか?」とアイディアを出せる。そこはやっぱり強みになってると思います。

すずけん:そうですね。ただ言われたことをやるのとは全然アプローチが違って、社会に解決したい問題があって、「さて。どうやろうか」を職種を超えて一緒に考えているのが、うちのエンジニアリングのスタイルのすごく良いところだと思ってます。 僕らはみんな仲間として一緒に課題について考えるし、むしろ何を課題にするか一緒に考える。そういった人がどんどん増えているし、やれてる人も多いと思うので、そこはすごく強みだと思ってますね。

小賀: 最初は言葉として明確になっていなかったけど、書籍を作る時に出てきた「事業をエンジニアリングする」っていう言葉がめちゃめちゃしっくりきた。

すずけん:しっくりきましたね、このワードが出てきたのすごいなって。これは...そうですね!って思いました。

小賀: うんうん。

すずけん:逆に、ちょっと足りてない部分って何だろうなと、考えてきたことがいくつかあります。以前から、サーバサイドのエンジニアリングに強い人が多いので、自然と画面を作るよりAPI作る方が好きな人が多いとか。CSSをいじるよりデータベースやモデリングが好きな人が、多い傾向があると思ってます。 そこに強みを持っている人が多いのはいい話なんですけど、例えば新しくアプリケーションを作ろうとした時に、僕らだと最初にUnityで作ろうと絶対ならないし。

小賀: わかる。

すずけん:ここ数年だとiOS/Androidのネイティブアプリから始めるサービスがありますけど、何も方針を決めずに行くとウェブで作る傾向が強くて、立ち上がりも速いし良い面もあるんですけど、世の中から「もっと良い技術あるんじゃない?」と問われると、もうちょっと選択肢が増えてもいいかなと思う時があります。

小賀: そこは悩ましいところで、広げすぎるとリスクにもなるんだけど、今はちょっと選択肢を増やした方がいいタイミングなんじゃないかな、というところだよね。

すずけん:そうですね。僕らは評価や採用・育成を技術力評価会におけるフィードバックを前提に作っているので、社内にその技術ができる人がいないと評価できる人も当然いなくて、同じ部署にいなくてもチームを横断してフィードバックする仕組みはあるんですけど、やっぱり社内でその技術の一人目に対して強くフィードバックできる人がいない形になるので。 今は社内にその技術のスペシャリストがいなくても、社外から評価者の方を呼んできて見てもらったり、業務委託の方と一緒にパートナーシップを組んでやってますけど、会社のコアとなる技術に育てていくには時間がかかるなと。これはどんな方法をとるにせよ難しいんですけど、課題だなと思ってます。

あと、人を増やしづらい。採用のハードルとしては僕らの文化にフィットする人、事業と向き合って、自分で考えて、やっぱり仕事を楽しめる人と一緒にやりたい。それはエンジニアだけじゃなく全社共通の価値観としてもあるので、改めて採用の難しさというのは感じています。
今までも急激に人を増やしてきたことはないはずで、徐々に増やしていくというスタイルを取ってきましたけど、事業をやっている中ではもっと一気に新たなプロダクトを立ち上げたい話があるので、そういう選択をするかもセットですけど、エンジニアを一気に増やすという選択肢が取りづらいというのは弱みだなと。

小賀: もちろん文化にフィットするというところもあるし、さらに組織としての当たり前基準をこれまで結構上げてきているので、採用の目線が以前より厳しくなっているのもあるかな。基準に足りないところがある人にも、活躍して成長してもらう場をどう組織として上手く作れるかは課題の1つかなと思います。

すずけん:そうですね。あと発展的には出来そうかなと思っているんですけど、エンジニアリングもどんどんいろんな形が出てきてるなと思っています。 例えばfluctの中では、CREという顧客信頼性エンジニアリングのチームがあります。いわゆるソフトウェアエンジニアリングでサーバーサイドの信頼性を上げるのではなく、ミッションとして「お客さんの利便性やカスタマーサポート・テックサポートのレベルを上げる」ことに取り組む専門チームです。
そういった取り組みの中で、ちょっとエンジニアリングの切り口を変えたアプローチも結構フィットすると思ったんです。だから評価や採用の中で、そういったことをもっと分かりやすく見せたり、社内でもフィードバックループを回しやすくする形を作りたいなと思ってます。

小賀: そうだね。そこは今後のトレンドというか、流れになっていくと思います。 例えば昔は、パソコンでPowerPointのようなツールでプレゼンテーション用の資料を作るのは、専門家しかできなかった時代があったけど、今はみんな作れるようになっている。 今後も、ソフトウェアエンジニアしか出来ない事はどんどんなくなって、ソフトウェアエンジニアリングがいろんな職種や他の専門職に溶け込んでいくと、会社としてどこまでをエンジニアリング、そしてエンジニア職とするのか。エンジニアリングの文化もその時どう考えていくのか、といったところはこれからの課題になってくるんだろうな。

すずけん:そうだと思います。小賀さんがまさにおっしゃったように、僕の野望としては全職種、人事・経理・法務のようなバックオフィス部門、今はエンジニアがいない事業などに、エンジニアリングの要素入れたり、エンジニアが入っていったりして、技術を使ってレバレッジを効かせるっていうことをやりたいと思ってます。

小賀: ちょっと発展的な話にもなったけど、強み・弱みだと今はそんな感じでしょうか。

そんなCARTAのエンジニアリングを作ってきた小賀さんですが、すずけんからはどんな風に見えていますか?

f:id:voyagegroup_tech:20220214112107j:plain すずけん:スーパーサイヤ人です(笑)CTOという仕事を10年という期間をかけてやってきた小賀さんへの、経営陣からの信頼というのはすごく大きなものがあります。小賀さんはいわゆるCTOの領域を超えて、全社のIT基盤(CIO)や、セキュリティ(CISO)の仕事もどんどん巻き取ってきたので。採用・育成・評価の戦略を組みながらも、全社で技術選定するときにどう任せていくかのようなPracticalな技術の調整だったり、仕事の範囲がとにかく広い。
それを全部やっていたのは、これはもうスーパーサイヤ人だなと思っています。

小賀: (笑)

すずけん:それから、小賀さんと仕事をする中で感じていることは、小賀さんってすごく人の話をちゃんと聞くんですよ。 それはエンジニアに限らず、いろんな職種の人や経営陣も含めて話をする中で、ちゃんと合意形成をして、一緒に課題を作って、一人でやるんじゃなく誰かと一緒にやる、ということを時間をかけてやってきた結果、協力する人が増えてきたんだなって思ってます。
それをいろいろなところで同時多発的にやっていたのが、小賀さんだったんだなと改めて知りました。

小賀: これはもう、ありがたいことにそういう経験を積ませてもらったことが大きい。ウェブサービスを作る経験をしてきたことによるものが大きかったと思うんだけど、事業としてウェブサービスを作ろうと思ったら一人じゃできないし、良いサービスを作ろう、良いエンジニアリングをしていこうと思ったら、職種をこえて関係者全員が事業やサービスの特性や制約を理解しないとできない。 その体験があるから、経営陣に入った時にも「現状はどうなってるの?」「そしてどうしたいの?」「こういうギャップがあるんだね。じゃあ、そのギャップに向かってどうしていこうか」と、まず認識をすり合わせることをすごく大事にしてきました。
そんなの当たり前って思うかもしれないけど、その当たり前を認識して、巻き込む時には整理するところから始めて、課題を明確にしながら、できるだけリアルタイムに共有して、みんなで解決しようとすると、一緒にやっていこうという気持ちなるかなと。かなり意識的にやってきたつもりではありますね。

すずけん:そうですよね。同じ会社のメンバーとして、一緒に良くしていこうと思ってるはずなのに、気がついたらなぜかぶつかることは、簡単に起きがちかもしれないんですけど、小賀さんがいる時にそういったシーンは見たことがないので。

小賀: 課題があって、その課題を会社の方向性と合わせて考えると最終的にはこうだよね、のような感じで、メンバーvsメンバーではなく、課題vsメンバーとなるように伝えることも意識してやってきたとは思います。

すずけん:CTOをやってみて感じたんですけど、経営陣の中にエンジニアリングの専門家って長らく小賀さんしかいなかったので、相談するなら全部小賀さんになるんですよね。だから頼られてるし、ある意味SPOFになりうるというのも、また真なりかと思いました。

小賀:宇佐美さん(CARTA HOLDINGS 会長)から直接、「ちょっと小賀さん相談なんだけど」というのがちょいちょい来る。これは信頼されていたということだし、それをきっかけに「じゃあ、これ次の経営会議で議題にしましょうか、私の方でまとめておきますね」みたいなことがよくありました。
今後はすずけんも、CEOや他の役員の人たちから信頼されて、経営レベルで考えるべき事について、まず相談というのがたくさん来ると思います。その時に、現状と理想のギャップをどう埋めるか、それは会社の方向性と合っているのかを考える、という経験をしていくと思います。
けど、意思決定って間違えることもたくさんあるんですよ。最初の意思決定が上手くいかなくて、「すいません、途中で軌道修正します」みたいなこともたくさんある。
そして、その意思決定の数だけ成長していくんだと思います。だから、すずけんも相談が来たら怖がらずにどんどん受け止めて、「たくさん意思決定して、いくつか失敗するかもしれませんが、そのときは経営陣でフォローお願いします!」って伝えて、とにかく自分自身としても新しいCTOとしても、意思決定をたくさんやっていって欲しいなと思います。

すずけん:了解です。自分も事業をする中で、トライして見せることは結構あったんですけど。経営陣となると効用を与える人も多いんだけど、失敗したときにこんな数の人たちの活動に影響するのかと改めて思ってます。これを小賀さんは10年やっていたのかと...。

小賀:それもプロダクトをエンジニアリングする時と同じような考え方で、どうやって変化を起こす場所や影響を受ける範囲を局所化するか、失敗した時に捨てやすいディスポーザブルな施策にするか、なにかが起こった時の変化を可観測にするか、どうやってオブザーバビリティを上げていくかいくか、そんな考え方でやっていけば良いと思います。

すずけん:はい。人間はイミュータブルではないですしね。

小賀:本当に私もいっぱい失敗してきたし、そこから学んで10年やってきたので、失敗もあるんだよという背中を見せていけばいいと思います。失敗も含めてトータルで成果を上げることにコミットしてやっていく。トータルで良くして信頼を勝ち得ていくには、巻き込んでいくことがすごく重要。
役員が担当する責任範囲って一人じゃ絶対できない。一緒にやるメンバーをいかに働きやすくするかによって、結果的に自分の責任をちゃんと果たすということをやってきたつもりです。 一緒にやってる人たちにチャレンジしやすいと考えてもらうために、私自身がチャレンジする、失敗の影響を少なくする、その辺をすごく考えてやってはきましたね。

小賀さんは新CTOとして動き始めたすずけんをどんな風に見ていますか?

f:id:voyagegroup_tech:20220214112051j:plain 小賀: CTOを交代すると決まってからのすずけんの動きを見ると、私が選択しなかったアプローチも取ってるけど、新しいCTOのチャレンジとして周りから応援されているよね。 今までを否定せずに、もっと良くするための新しいチャレンジをたくさんしていきますというところが大事で、それを今すごく上手くできているので、もっと加速していって欲しいなと思います。

すずけん:ありがとうございます。今まさに引き継ぎ中なので、たぶん小賀さんから見ても「ああ...それでいっちゃう?いっちゃうの?」みたいなことも結構あると思うんですけど、温かく見守ってもらっている気がします。

小賀: 今回のすずけんの動きを見ていると、本当にもっと早くCTOをすずけんに渡すべきだったなと思いました。例えば、アメリカの大統領が変わった直後は政策を変えやすい、というのがあるじゃないですか。 私には、長い間の信頼関係があるからこその進めやすさがありましたが、逆に今までのやり方を覆すことへの難しさもあったりしました。組織の健全性を考えると、一定のタイミングで高いポジションの人が変わっていくのはいいことなんじゃないかなと、すずけんの動きを見ていてすごく感じます。

すずけん: 日本の総裁がたくさん変わっていくと困りますけど(笑)僕も今のタイミングはすごくを変えやすいと思っていて、自分なりにいろんなアクションを起こしてみています。 あと、小賀さんの仕事を結構近くで見てきて、自分でやるならやっぱり真似できないなと思うことは多々あるので、一つ一つ紐解きながら自分なりのやり方に変えているところですね。

小賀:お互いに強みが違うので、そうだと思います。

すずけん: 僕だけじゃなくて、きっとみんなも小賀さんが退任することで何が変わるんだろうって最初に不安になるだろうし、それは当たり前だと思うから。そして新しいCTOは何をするんだろう?ってみんなが思ってくれてるタイミングなので、ある意味それは良い機会だなと思います。もちろんその期待を超えなきゃいけないので、そう思っていろんなことにチャレンジしてますね。

新CTOとして、これからのCARTAのエンジアリングをどうしていきたいと考えていますか?

f:id:voyagegroup_tech:20220216113249j:plain すずけん:最初にまず考え方として、基本的に事業を作っていきたいんです。なぜかというと、既存の事業が伸びたり新しい事業が生まれていかないと、会社の推進力や価値観はどこかで失われていってしまうと思っているからです。常に新しいものを生み出し続けて、自分もそこに関わっていきたいと思っています。
今まで自分自身も、事業責任者や多くのメンバーと一緒に市場に向き合って仕事をしてきました。そして今後は、CARTA CTOの攻めの部分として、事業を推進する力をもっと上げていきたい。これは個人として一番思っていることです。

一方で、小賀さんの担当領域の中で、会社の情報基盤を支える部分(CIO)やセキュリティの部分(CISO)などのいわゆる守りの部分は、僕自身がやってきたわけではなくて、社内にいるプロフェッショナルなメンバーにすごく頼ってきました。今後CTOの機能をどうしていくか考えた時、それぞれを分けて考えようと思いました。

まず、エンジニアがもっとプロダクトを生み出せるようにすることや採用・育成・評価はとても大事な領域で、ここは引き続きCTOが持って強化していくべきだと思ってます。
その中でも、自分たちが足りないと思っている採用を強化したいです。特にCARTAで採用をしていくにあたって、改めてエンジニアリングの在り方と方向性を定めて価値観をそろえた上で、みんなでそこに向かっていくことが必要だと思ってます。
CARTAとしての新たな価値観でのエンジニアリングに共感してもらえる人に向けて、みんなでやっていこうと思います。これからいろんな変化が待ってますが、まず2022年以降の採用をしっかりやることを重要なプライオリティとして動いてます。

文化については、小賀さんがずっと作ってきたエンジニアリングの文化があり、これは事業を伸ばし推進していく力の源泉だと思っています。そして事業をエンジニアリングする、自分で考えられるエンジニアが居続けることは、一番の資産だと思っているので、僕ら自身でそういった文化を更に強化していきたいし、そこにコミットしたいと思ってます。

一方で、技術的な多様性が足りないという話をしましたけど、CARTAとして事業を推進していく中で、今は社内で使う人が少ないけれど市場の中で重要な技術というものを、いかにして取り入れて引き上げていくか、これは課題だと思っています。
例えばDSP(Demand Side Platform)を手掛けるZucksの事業だと、かなり統計処理や機械学習、制御工学を使ってるんですけど、そういった技術は他の事業では使えないかというと、使えるんです。ただ知識を持ったエンジニアは、どうしてもそこに集まってしまう。なぜなら、そこには育てられるチームがあるし、環境があるし、現場でフィードバックもできるから。
他のプロダクトのメンバーは、すごくバックエンドやフロントエンドのエンジニアリングができる、データを使って何かをするっていう着想もあるんだけど、解像度が高くないという時に、社内にある知見を今よりもっと巡らせたいなと思ってるんですね。

例えば勉強会・読書会でもいいですし、その技術に詳しいエンジニアと話す機会を作ることでもいいと思うんですけど、社内にある知識をもっと巡らせる施策をいろいろやりたいと思っています。同時に、社外の知識をもっと取り入れて自分たちの知識をアップデートすることを、計画的に継続的に効果的にやる必要があると思ってます。

今も、和田さん(@t_wada)に技術コーチで入っていただいたり、そーだいさん(@soudai1025)にデータベース関連のところを見ていただいていますが、もっと外部の方々の技術や知識とか考え方を、CARTAとしても、それぞれの事業としても、もっと取り入れるようにしたい。これは社内にある知識を循環させるだけだと、新しいものが生まれづらいのではと考えているからです。
もちろん、新しい本を読んだり輪読したりするんですけど、どこかで飛び越えたステップアップをするタイミングを作ることは、新しい事業を作っていくためにも必要だと思っているので、それができる環境の準備をしたいなと思っています。

小賀:その技術を使うと事業にとって効果的だとわかっているものには、もちろん固定費として投資できるけど、まだちょっと固定費として投資しづらいものにどうチャレンジしていくかという中では、社内で既にある知見を持ってくることや、外の知見を取り込むことはもっと強化できそうなところだよね。

すずけん:そうですね。僕らの場合、1回事業として立ち上がれば、そこでPLを作ってモニタリングしながら、技術を順番にプロダクトに組み込んでリリースして、継続的に学ぶ仕組み作りって結構得意だと思うんですよ。

小賀:うん。

すずけん:それは、事業という意味でも、プロダクト開発の知見を溜めるという意味でも、結構上手くやれる。一度そのサイクルに入ると、育つ見込みがあるかなと思うんですけど、最初どうする?というのは課題としてあると思うので。
やっぱり、今はない技術をコアにした事業を作っていけると、そのチームで技術が育って、全社に還元されるという形が作れると思うので、トライしたいなと思ってますね。

小賀:新しいものって最初のハードルが高い、そのハードルを下げるために他のチームや外の知見を活かすことで、もっとチャレンジしやすくする。チームとして新しいことに取り組みやすくする、というのはすごくいいですよね。

すずけん:これはちょっとまだ整理しきれてないことなんですけど、事業を推進することを一番やりたい中で、信じている力は何かと聞かれると、それはやっぱり個々の才能なんですよ。
あるエンジニアや事業責任者が考えうること、思いつくことしかできないからこそ、最大限その才能を発揮するために、必要な素材とか着想を得られるチャンスがないと、広げられる範囲が限定されて、会社の大きさの限界になるじゃないですか。

小賀:うん。

すずけん:だからそういった機会を作らないと、会社自体も小さくなるし、魅力も生まれる事業も小さくなるから、個人を信じてそういった機会を多くしたい。これはすごくやりたい。今も個人の可能性を信じて作っている評価や育成・採用だと思っていて、これは良い部分だと思っているので、もっと伸ばしたいなと思ってます。

小賀:これまでも画一的な教育みたいなことを試しにいくつかやってみたけど、全然フィットしなかったんだよね、会社の文化的に(笑)

すずけん:そうですよね。本当に面白いことに新卒エンジニア研修とかどんどん薄くなって(笑)

小賀:薄くなっていって最後には無くなったからね(笑)

すずけん:そうなんですよ。いろんな会社とか開発チームの事例を見て思ったのは、丁寧な研修をして育てられていくのは本当にすごいなと。僕らはそれは上手く回せてないなと思っていて、でもそうなってしまうのは現場の開発チームに入った時の学びがすごく大きいので、結局開発チームに入った方が成長早くない?って今なっていると思いますし。

小賀:そうなんだよね。

すずけん:僕も事業部でやっていてそれを結構感じているんですけど、CARTAのエンジニア組織として育てていこうとした時に、それが本当に効果的かは常に見ていく必要があると思っていて。
現場のプロダクト開発による学びが大きいというのは非常に良いことだし、引き続き強みであり続けると思うんですけど、さらに事業部内だけだと伸ばせない方向や技術や発見を生み出す機会は支援していけるようにしたいなと思ってます。

小賀:そこは新しいチャレンジだと思います。今のエンジニアリング文化というのは、画一的にやるより、特色の違う事業とチームでそれぞれが伸びて成果を出せることを重視したところがある。それが整ってきた今、改めてチャレンジしていくのはすごくいいタイミングなんじゃないかなと思いますね。

すずけん:これは、小賀さんが評価制度を整えてくれて、事業でプロダクトを大切にして内部品質を上げてきたベースがあるから、さらにステップアップするために非連続的に伸ばすためにどうするかということなので、本当にありがとうございます。

小賀:昔もチャレンジしたけど上手くできなかったことを、改めてチャレンジしていくっていうのはすごくいい取り組みだなと思いました。

すずけん:ありがとうございます。ここまで話してきたことが個人として信じているし、やりたいなと思っている方向性です。まだ出せてないんですけど言語化して、社内にも社外にも伝えようと思ってます。
あと、小賀さんがやっていた守りの部分、会社の環境や基盤、セキュリティの部分はもちろん大事だしやっていかなければならないと。ここは、より周りを巻き込んでやっていこうと思っています。今もそれぞれのチームでオーナーシップを持ってやってくれている人たちがいるから、僕も教えてもらいながら把握をして、全体としてのコーディネイトはしつつ、それぞれの機能をちゃんと渡して、もっと信頼して任せていくということをやりたいなと思っています。

小賀さん to すずけん

f:id:voyagegroup_tech:20220214173109j:plain 小賀:事業をテクノロジーでドライブしていくというCTOの役割って、これからのCARTAにとってものすごく重要なことです。CTOが事業を攻めていくところを信念を持ってやっていくことはとても良いと思います。
すずけんもいってたけど影響力の大きい意思決定をする場面が何回も出てきます。影響が大きい時はじっくり時間をかけて決定することも重要ですが、いかにリスクを下げて速い意思決定をするか、意思決定の回数を増やしてそこからの学びを増やしていくかが大事だと思います。
といいつつ、今の動き方を見ていると、すずけんならできるだろうと思っているので、自分の信念を持って突き進んでくれたらと思います。

すずけん:はい。

小賀:ソフトウェアをベースとしたプロダクトのエンジニアリングっていうのは、めちゃめちゃ経営に活かせる考え方がたくさんあると思います。経営陣の中だと技術の経験を持った人はすずけんになるので、その角度から経営をドライブしていってくれたら、もっともっとCARTAの経営は良くなると思います。

すずけん:ありがとうございます!

お知らせ

2022年2月18日のDevelopers Summit(デブサミ)に、新CTO鈴木と前CTO小賀が登壇いたします。
2022年からCTO交代!新旧CTOが語るこれまでの10年とこれからのエンジニア組織と文化

この記事はCARTAのオウンドメディア「EVOLUTiON」との連動企画です。
新旧CTOが語るCARTAのエンジニアリング、そして未来―「事業を推進できるエンジニアを育てたい」