6・7月のIABトピックダイジェスト

こんにちは、CCIのIAB担当です。今回は6・7月のIAB関連トピックをダイジェストで紹介します。

Supply Chain Validation サービスの提供開始

IAB Tech Labは、6月29日にパブリッシャーのサプライチェーン検証のための新自動化サービスをリリースしたことを発表しました。このサービスはデジタル広告サプライチェーンにおいて既に広く普及しているads.txtおよびapp-ads.txtファイルを使用したものです。

ads.txtとapp-ads.txtは、サイト運営者(パブリッシャー)が誰に広告枠販売を許可しているのかを公開するメカニズムであり、不正で詐欺的な広告枠を排除するのに役立ちます。これと併せてsellers.jsonの仕様を活用することで、バイヤー側ではデジタル広告のバイイングの際、誰が直接的なセラーで、誰が仲介者なのかなど、エンティティ情報を確認することができます。

今回公開された新サービスは、このads.txt/app-ads.txtとsellers.jsonとを照合する検証作業をプログラムで実行してくれるもので、今まで実装や運用が個社に委ねられていたプロセスを自動化且つ一元化してくれる利便性をもたらすサービスと言えるでしょう。

Tech Labのブログ記事によると、このサプライチェーン検証サービスは以下を実行します:

  1. ads.txtとsellers.json間の情報を日次で検証する
  2. パブリッシャーに、ads.txt内で記載しているセラーと参照されたsellers.jsonファイル間の不整合を通知する
  3. すべてのIAB Tech Labメンバーに対して、検証結果にアクセスできるようにする

  • 料金・・・このサービスはサブスクリプションサービスとなっており、年会費は、1ドメインあたり99ドルかかるそうです。
  • 対象・・・ads.txtまたはapp-ads.txtを設置しているパブリッシャーであれば、誰でも申し込み可能です。また、グローバルプログラムであり、すべての地域で利用可能とのこと。申し込みはTech Labのツールポータルにて可能となっているそうです。(https://tools.iabtechlab.com/

実際のテストケースやレポート項目など、同サービスの詳細については以下のドキュメントから参照できます:https://iabtechlab.com/wp-content/uploads/2021/05/Supply-Chain-Validation-for-Publishers.pdf

Transparency Centerの開設

IAB Tech Labでは、会員向けにサプライチェーンの透明性維持に貢献するリポジトリである「Transparency Center」の開設を予定していることを発表しました。
Transparency Centerは、Tech LabのToolsポータルサイト内に開設される予定の、デジタル広告エコシステムに関わるステークホルダーのあらゆるメタデータを保存しておく場所になります。全ての情報を一か所にまとめてアクセスしやすくすることが目的です。

刻々と変化するデジタル広告のエコシステムでは、パートナーとの取引方法に関する情報を共有することがこれまで以上に重要になっています。例えば、どのような標準に準拠しているか、認証を受けているコンプライアンスプログラム、運営している企業体のIDなどです。このようなメタデータは、バイサイドとセルサイドが安心して取引を行うために役立ちます。これらの情報にアクセスし利用することによって、デジタル広告プラットフォーム各社やデジタル広告エコシステムの参加者は、安全で信頼性の高い取引を行うことができます。

Tech Labでは、これらの情報をTech Lab Tools ポータルにログインして情報閲覧する、もしくはAPIアクセス権を購入してAPIベースでアクセスできるようにする予定だそうです。前項で紹介したSupply Chain Validationサービスも、このTransparency Centerサービスの一部として提供されるようです。

Transparency Centerで閲覧・アクセス可能な情報例:

  • アドテク企業等がどのようなコンプライアンスプログラムの認定を取得しているか
  • どのようなサプライチェーン標準規格に準拠しているか
  • アドテクビジネス関連の 識別情報(例:SKAdnetworkに参加する際のID情報など)

また、8月11日にはAPAC地域向けにTransparency Centerについてのウェビナーが予定されています。詳しくは下記リンクからTech Labのサイトを参照してください:
https://iabtechlab.com/event/iab-tech-labs-transparency-center-webinar-apac/

IAB Tech Labの新CEOとしてAnthony Katsur氏が就任

IAB Tech Labは、8月2日付で Anthony Katsur氏が新CEOに就任すると発表しました。Katsur氏は2017年から2021年5月まで同団体のCEOを務めていたDennis Buchheim氏の後任となります。

Tech Labによると、Katsur氏はTech LabのCEO以前には米国最大のローカルテレビ・メディア企業であるNexstar, Inc.のデジタル戦略・企業開発・オペレーション担当上級副社長を務めていました。また、Nexstar社以前は、Sonobiの社長として戦略の実行、効果的なチームの採用と指揮、主要なエージェンシーやブランド、メディア企業とのビジネスを遂行し、Rubicon Project、MediaMath、MaxifierにてCEOを歴任するなどしてリーダーシップを発揮してきました。それ以前にはNetGravity社の買収によりDoubleClick社に入社、プロダクト、オペレーション、エンジニアリングの各部門を率いてきました。

同氏は、「今回の役割は、私に多くのものを与えてくれた業界に恩返しをする機会だと考えています。Tech Labの役員、メンバー企業、そして世界中の業界全体と協力して、業界を前進させていきたい」と述べています。

参考

https://iabtechlab.com/press-releases/tech-lab-launches-new-supply-chain-validation-service-for-publishers/

https://iabtechlab.com/press-releases/anthony-katsur-joins-iab-tech-lab-as-new-ceo/



IAB Tech Labについて

IAB Tech Lab (The IAB Technology Laboratory) は、米国のインタラクティブ広告業界団体であるIABが設立した、デジタルメディアとデジタル広告業界におけるグローバルな技術標準の確立と導入を促進するための国際的な研究・開発のコンソーシアムです。CCIは2017年1月からTech Lab会員となっています。