3・4月の IABトピックダイジェスト

今回は3月・4月のIAB関連のトピックダイジェストをお届けします。

1. Project Rearc アップデート - IAB ALMにて4つの規格を発表

ユーザープライバシーに配慮した説明責任を伴うデジタル広告エコシステムを再構築することをミッションに掲げる「Project Rearc」の発足が初めて発表されたのは、約1年前、2020年2月のIABの年次総会(Annual Leadership Meeting; ALM)においてのことでした。そして昨夏には「Partnership for Responsible Addressable Media(PRAM)」との連携が発表され、業界のあらゆるステークホルダーらとともにビジネス、政策、技術的な取り組みをまとめる活動が続けられています。

ALMは毎年初春に米国で開催されていますが、今年はコロナウィルスの影響で初のオンライン開催となりました。そのALM2021にて、Project Rearcの成果物となる4つの規格が発表されましたので紹介します。

発表された規格:

① アカウンタビリティ・プラットフォーム
② グローバル・プライバシー・プラットフォーム
③ ユーザが提供するIDトークンのベストプラクティス
④ セラーが定義したオーディエンスとコンテクストシグナル送信をサポートするタクソノミーとデータの透明性基準

①アカウンタビリティ・プラットフォーム 

アカウンタビリティ(説明責任)プラットフォームは、すべてのサプライチェーンの参加者がユーザーの意向を遵守していることを一貫して証明できるようにするためのものです。オープンで監査可能なデータ構造の仕様と、デジタル広告のサプライチェーンが、ユーザーやユーザーが訪れるデジタルプロパティが設定したプリファレンスや制限に適合していることを確実に証明するための標準的な手法を提供する基盤です。現在のプライバシーシグナルの送信手法およびグローバル・プライバシー・プラットフォームで想定されているシグナル送信と連動するように設計されています。
https://iabtechlab.com/wp-content/uploads/2021/03/iabtechlab_accountability_platform_rfc_2021_march.pdf

②グローバル・プライバシー・プラットフォーム

このプラットフォーム仕様は、データ利用の透明性とユーザー管理を目的とした地域ごとのポリシーを技術的にサポートし、デジタル広告サプライチェーンで送信されるシグナルが、地域ごとの規制や規範を遵守できるようにするものです。本プラットフォームのミッションは、技術的なプライバシー基準を単一のスキーマとツール群に集約することであり、チャンネルを問わず、規制やマーケットの要求に対応することができます。
また、グローバル・プライバシー・プラットフォームは、アカウンタビリティ・プラットフォームに接続できるように設計されており、広告のサプライチェーンがユーザーの意向を尊重しているかどうかを分析できるようになっています。
https://iabtechlab.com/wp-content/uploads/2021/03/iabtechlab_global_privacy_platform_rfc_2021_march.pdf

③ユーザが提供するIDトークンのベストプラクティス

これはパブリッシャーとマーケターが、ユーザー提供の電子メールまたは電話番号に紐付けられたIDを元に、パーソナライズされたコンテンツとサービスを提供するシナリオで、セキュリティと消費者のプライバシーを確​​保するための一連のガイドラインです。
https://iabtechlab.com/wp-content/uploads/2021/03/IABTechLab_Best_Practices_for_User-enabled_Identity_Tokens_2021-03.pdf


④セラーが定義したオーディエンスとコンテクストシグナル送信をサポートするタクソノミーとデータの透明性基準

これはユーザー提供またはサードパーティの識別子が利用できない場合に、OpenRTB内で渡されるセラーが定義したオーディエンスやコンテキスト属性を活用してアドレサビリティを実現する際の標準仕様を説明したものです。IAB Tech LabがリリースしたContent Taxonomy 2.xまたはAudience Taxonomy 1.xをもとに、パブリッシャーが定義したコンテキストやオーディエンス属性をOpenRTBで受け渡すことを中心としたアドレサビリティのアプローチの提案です。
https://iabtechlab.com/wp-content/uploads/2021/03/IABTechLab_Taxonomy_and_Data_Transparency_Standards_to_Support_Seller-defined_Audience_and_Context_Signaling_2021-03.pdf


IAB Tech Labは、プレスリリースの中で次のように述べています。「全てのブラウザでのサードパーティCookieの消失や、モバイル広告IDへの変更が差し迫る中、広告・メディア業界と協力して、オープンソースや独自ソリューションの開発を支援するため、プライバシーを保護する仕様とベストプラクティスを策定するために取り組んできました。そして、PRAM(Partnership for Responsible Addressable Media)とのパートナーシップにより、アドレッサビリティ、アカウンタビリティ、プライバシーを考慮したデジタルメディアの再構築を支援するための初期仕様とベストプラクティスを発表しました。」

今回発表された仕様およびベストプラクティスはすべて、実用性、安全性、拡張性に優れ、市場のイノベーションを支援し、広告主やパブリッシャーがオーディエンスと直接接続できるかどうかにかかわらず、広告エコシステム全体のパブリッシャー、広告主、および構成員のデータ透明性基準への適合を可能にするように設計されているとのことです。

そして、Tech Labでは、Project RearcやPRAMのワーキンググループに参加し、発表したこれらの仕様およびベストプラクティスのレビューに参加することを引き続き業界に呼びかけています。

2. Buyers.jsonと DemandChain Objectの発表

少し前になりますが、Sellers.json/SupplyChain Objectのバイヤー版機能であり、マルバタイジングおよび悪質な広告に関する課題に対処するための Buyers.jsonと DemandChain Objectが発表され、4月30日までパブリックコメントを募集中でした。

Buyers.jsonは、 DSPのプライマリドメインに設置されるファイルで(例:https://mydspservedomain.example/buyers.json )、プログラマティック取引においてDSPなどの広告システムや仲介業者が、彼らが代表(represent)するバイヤーをパブリックに宣言するためのメカニズムです。Buyers.jsonで提供される情報を利用して、パブリッシャーとSSPは、問題あるバイヤーやマルバタイジング攻撃の原因をより簡単に特定し、自社とそのユーザーを保護するための適切な措置を講じることができるとIAB Tech Labは述べています。

また、DemandChain Objectを使用すると、在庫のセラーは、OpenRTBの入札レスポンスに埋め込まれた当該クリエイティブの配信に関与するすべての関係者を確認できます。この拡張オブジェクトは、OpenRTB2.xまたはOpenRTB3.0で使用可能とのことです。

仕様書には以下リンクからアクセスできます:
https://iabtechlab.com/buyers-json-demand-chain/

Sellers.jsonについては開始当初大手DSP/SSPが媒体社への実装を積極的に推奨していたため、現在プログラマティック取引をしている媒体はほとんど実装しているような状況ですが、buyers.jsonは今後どの程度普及していくのか、気になるところですね。


IAB Tech Labについて

IAB Tech Lab (The IAB Technology Laboratory) は、米国のインタラクティブ広告業界団体であるIABが設立した、デジタルメディアとデジタル広告業界におけるグローバルな技術標準の確立と導入を促進するための国際的な研究・開発のコンソーシアムです。CCIは2017年1月からTech Lab会員となっています。