PRAMがUnified ID 2.0の評価を開始

はじめに

Appleが延期していたIDFAのオプトイン化を今春に実装することを明らかにしたり、GoogleがサードパーティCookieの代替として開発したFLoCの有効性を発表したりするなど、年初早々プライバシーやアドレサビリティ周りでいろいろな動きがありますね。IABが推進する「Project Rearc」が技術ワーキンググループを務めている業界団体「Partnership for Responsible Addressable Media(PRAM)」周辺でも動きがありましたので紹介します。

業界団体PRAMがポストクッキー技術基盤のソースコードを募集中

今回のポイントをまとめてみました;

  • 米国の業界横断イニシアチブ「Partnership for Responsible Addressable Media(PRAM)」が、プライバシーに配慮したアドレサビリティ実現のため、業界各社が保有/開発しているソリューションのコード提供(譲渡)を呼びかけた。今後、提供されたコードが業界標準確立の基盤になるかどうかという観点で評価していくという。
  • 米国大手DSP The Trade Desk(TTD)は、PRAMの呼びかけに応じて同社が開発しているUnified ID 2.0(UID2.0)のコード提供を行うと発表。
  • UID2.0は今後PRAMとPRAMの技術部会を担当するProject Rearc(IAB Tech Lab)によって、新たな業界標準の共同開発に貢献できるものであるかどうかが検証されていくことになる。

PRAMについては過去記事でも紹介しましたが、プライバシーに配慮したデジタルメディアの新標準を再構築するProject Rearcの取り組みに、広告主やエージェンシー、各種業界団体などより多くのステークホルダーを関与させるために昨年発足した業界横断型のイニシアチブで、現在約400社が参加していると言われています。PRAM内の技術ワーキンググループを、実質的にはProject Rearc(=IAB Tech Lab)が担っており、両者は連動した動きをしています。

そのPRAMが、先月プレスリリースを発表し、デジタル広告およびメディア業界に対して、「アドレサビリティとアカウンタビリティ(説明責任)のための協調的開発にあたり、コードを提供してほしい」と呼び掛けました。これに最初に応じる形で、DSP大手TTDが、「Unified ID 2.0(UID2.0)」のコードを提供することも同時に発表されました。

PRAMプレスリリースの声明の一部和訳:
「コードを提供していただき、業界として共同開発ができるようにしてほしいのです。それにより、消費者のプライバシー、平等なアクセスなどが担保された ”Privacy by Default” な世界が実現します。」

前述のとおり、PRAMの技術標準ワーキンググループは実質的にProject Rearc(IAB Tech Lab)であるため、実際にはIAB Tech Labが中心となって技術評価を進めていくことになるでしょう。提供されたコードは、さらにPRAMのプライバシーポリシーやリーガル観点からも評価され、また、ビジネスプラクティスも様々なビジネスユースケースと照らし合わせて評価されるそうです。

またPRAMとTech Labは、今後UID2.0以外のソースコードやソリューションも評価していくつもりであると述べており、引き続き業界各社に、評価対象となるコードやコンポーネントの提供を呼びかけています。

コード提供の条件とFAQ

コード提供の主な条件:

  • 現状、運用可能なものであること
  • アドレサビリティとアカウンタビリティスタンダードの発展を促すものであること
  • 商業的革新を伴うものであること
  • 消費者のプライバシー保護や、相互運用性など、PRAM発足時に発表された同組織の活動理念に沿うものであること etc. (参考:PRAMホームページ

IAB Tech Labのブログでは、「TTDのコード提供によりUID2.0が検証されることは、今後UID2.0が『独立した、客観的第三者により管理・運営される可能性が出てくることを意味する』」と述べています。そしてPRAMの発表と連動して、コード提供に関するFAQページも設けられました。そのFAQによると、今回の試みは「特定ベンダーのソリューションを承認したり支持したりするものではなく、業界内でのコラボレーションを促進し、”Privacy by Default”の技術標準やポリシーの発展を促すもの」だということです。

また、「特定のコードをPRAMに譲渡するということは、所有者は独占的所有権(proprietary ownership)を放棄するということになり、それによってより広範な人々がプロプライエタリ・ライセンスまたはオープンソース・ライセンスの下でそのコードを研究・変更・改良・配布できるようになることを意味しているが、譲渡者自身が開発できなくなるわけではない」などと、オープンソースライセンスについての説明も記載されています。

おわりに

adexchangerの記事では2017年にIntegral Ad Science社がOpen Measurement SDKのコードをIAB Tech Labに提供したことを例に挙げており(その後、OM SDKが広く利用されるようになったのは周知のとおり)、今回のUID2.0の評価もうまく進めば業界に流通するポストクッキーソリューションの標準基盤となる可能性が出てきたと言えるかもしれません。TTDに続いてコード提供されるソリューションが出てくるのかも気になります。


IAB Tech Labについて

IAB Tech Lab (The IAB Technology Laboratory) は、米国のインタラクティブ広告業界団体であるIABが設立した、デジタルメディアとデジタル広告業界におけるグローバルな技術標準の確立と導入を促進するための国際的な研究・開発のコンソーシアムです。CCIは2017年1月からTech Lab会員となっています。