はじめに
IABとIAB Tech Labは今年2月、デジタルマーケティングの仕組みを消費者のプライバシーに配慮したエコシステムへと「再構築(Re-architect)」するための業界横断的な取り組みとして 「Project Rearc(プロジェクト・リアーク)」 を立ち上げましたが、それから半年後の8月、Project Rearcと同様にプライバシーを保護し、消費者の体験を向上させながらアドレッサビリティの実現を目指す業界横断イニシアチブ 「Partnership for Responsible Addressable Media」 の発足が発表されました。
直訳すると「責任あるアドレッサブルなメディアのためのパートナーシップ」となりますが、どのような取り組みで、Project Rearcとは何が違うのでしょうか?8月4日のTech Labのブログ記事「IAB TECH LAB, PROJECT REARC AND THE PARTNERSHIP FOR RESPONSIBLE ADDRESSABLE MEDIA」の内容を参考にしながら解説します。
Partnership for Responsible Addressable Mediaとは
Partnership for Responsible Addressable Mediaは、プライバシーを保護し、消費者体験を向上させながら、デジタルメディアや広告のカスタマイズ・分析などの重要な機能を進化させるために、世界の広告業界のあらゆるセクターを代表する主要な広告業界団体と企業が協力する取り組みです。
参加団体
Partnership for Responsible Addressable Mediaは、主に下記の業界団体や企業が中心となって結成されています。また、ANA(全米広告主協会)のEVPでもあるビル・タッカー氏がエグゼクティブ・ディレクターとして同パートナーシップを主導し、 マーケターのニーズに重点を置いた取り組みになるとのことです。
- 業界団体:4A’s(全米広告業協会)、ANA(全米広告主協会)、IAB、IAB Tech Lab、Network Advertising Initiative(NAI)、WFA(世界広告主連盟)
- 広告主:フォード、ゼネラルモーターズ、IBM、P&G、ユニリーバ、マスターカード
- エージェンシー:UM(an IPG Mediabrands company)、Publicis Media
- パブリッシャー:NBCUniversal
- アドテク/マーテク企業:Adobe、LiveRamp、MediaMath、The Trade Desk
など
パートナーシップ発足の背景
同パートナーシップは、広告業界で最も影響力のある組織、特にこれまでのProject Rearcでは参加が少なかったバイサイドのトップ層を積極的に招集するために発足される運びとなったようです。
Project Rearcとの関係性
基本的にはProject Rearcは、Partnership for Responsible Addressable Mediaの技術的基盤としての役割を果たし、同パートナーシップ参加者からビジネスや政策面の指針のインプットを受けて活動を継続していくとのことです。
また、IAB Tech Labは、同パートナーシップ内の「技術標準ワーキンググループ」を主導する役割を担っていきます。IAB Tech Labのプレジデントであるデニス・バッカイム氏が同パートナーシップの技術標準面での取り組みを監督することも発表されています。
まとめ
IABはProject Rearcの発足当時から、デジタル広告エコシステム再構築のためにはビジネスや政策、テクノロジーに関与するすべてのステークホルダーが一堂に会することが必要不可欠であると訴え、あらゆるプレーヤーの参加を募ってきましたが、Project Rearcのみでは、影響力の強いステークホルダー達、特にバイサイドのトップ層の関与が薄かったことが課題であったようです。それをカバーし、業界からより広範に協力者を募っていかなければいけないという動機が、今回のPartnership for Responsible Addressable Mediaの発足につながったのではないかと見られます。これにより、既存のProject Rearcにもバイサイドからのインプットが増え、よりいっそうプロジェクトが進捗していくことが期待できるのではないでしょうか。
Partnership for Responsible Addressable Media発足の発表はこちら:
https://www.ana.net/content/show/id/ResponsibleAddressableMedia
IAB Tech Labについて
IAB Tech Lab (The IAB Technology Laboratory) は、米国のインタラクティブ広告業界団体であるIABが設立した、デジタルメディアとデジタル広告業界におけるグローバルな技術標準の確立と導入を促進するための国際的な研究・開発のコンソーシアムです。CCIは2017年1月からTech Lab会員となっています。