IAB NewFronts 2021

今回は5月に開催された IAB NewFrontsについて、海外の記事を元に紹介します。

IAB NewFrontsとは

NewFrontsは、米国の伝統的なTV業界の広告枠先行販売イベントであるアップフロント(Upfronts)を模して、米国IAB(Interactive Advertising Bureau)が主体となり毎年開催しているデジタルコンテンツのプレゼン&先行販売イベントです。デジタルコンテンツニューフロントとも呼ばれます。

NewFrontsは、デジタルメディア業界としてのUpfrontsに対する回答であり、デジタルメディアネットワークが、来シーズン登場する新たなデジタルコンテンツについてメディアバイヤーに提示するプレゼンテーションです。例年Upfronts開催時期にも近い4月下旬から5月上旬の1週間強の期間、米国ニューヨーク市で開催されていましたが、今年はオンラインでの開催となりました。

今年のポイントとハイライト

今年のNewFrontsは5月3日から6日にかけて開催されました。テレビ局が来期の番組編成をメディアバイヤー向けに紹介するTV Upfrontsに趣旨は似ているものの、焦点は異なり、NewFrontsではデジタル領域にフォーカスしたプレゼンが行われ、デジタル領域がどのように成長しているのかや、広告主がどのようなサービスを利用できるのかが紹介されました。

プレゼンターは、ソーシャルメディアプラットフォーム、ブランドセーフティパートナー、テレビや出版の有力者、ストリーミングサービスなど多岐に渡りますが、ほとんどの発表には3つの主要な要素が含まれていたとのことです。

  • 広告(主)は、高品質なコンテンツに掲出されるべきであり、そのためには大規模で多様なライブラリにアクセスできるパートナーが必要である。
  • クッキーの価値が低下してきているため、広告主は、パートナーが提供する独自のターゲティングについて知っておく必要がある。
  • ストリーミングビデオはこの1年で飛躍的に成長し、様々なストリーミングプラットフォームやサービスが対応してきている。

各社プレゼンハイライト

今回のNewFrontsでは、4日間で合計38ものプレゼンテーションが行われましたが、中でも重要なプレゼンターのハイライトが海外記事にて紹介されていました。

  • TubiとAmazon - TubiとAmazonは、ストリーミングとコンテンツに焦点を当てた最初のプレゼンターでした。Tubiは、広告付き無料ストリーミングサービスの最大手で(2020年4月にFoxが買収)、Tubiの視聴者の68%が他のストリーミングプラットフォームではリーチできないとアピールしました。これはより多くの消費者へのリーチに予算投下したい広告主にとって、興味深い価値ある提案です。HuluやPeacockなどと同様に、Tubiも今年、Tubiでしか見られないオリジナルエピソードのコンテンツを開発していることを発表しました。
  • Amazon - Amazonも自社のストリーミングサービスについて大きくアピールしましたが、(広告サポートではない)Prime Videoには焦点が当てられず、代わりに、IMDB TVとTwitchの紹介がメインでした。他社ストリーミング・プラットフォームと同様に、IMDB TVにはTVや映画コンテンツで流す標準的な15秒や30秒の広告在庫がありますが、広告内に商品名やレビュースコアを追加して、その商品がAmazonで購入可能であることを知らせる機能もあります。なお、IMDB TVの在庫は、現時点ではAmazon DSPを通じてのみ購入することができます。
  • NBC(Peacock)- NBCの新ストリーミング・プラットフォームであるPeacockは、NBCユニバーサルのプレゼンテーションの寵児となり、サービス開始1年でのユーザー数の増加を強調しました。Peacockの最大のニュースは、まもなく広告在庫をプログラマティックDSPに開放し、The Trade Deskのようなバイイングプラットフォームを通じて、より多くの広告主がストリーミングサービスに登場しやすくなるということです。もうひとつの興味深い点は、NBCユニバーサルが所有するすべてのネットワークにあらゆるデバイスで広告を掲載できるようにする「ONE Platform」で、同社は、高品質なコンテンツを持つ同社のさまざまなネットワークの人気の高さをアピールしました。
  • Condé NastとMeredith - 出版大手のコンデナスト社とメレディス社も、それぞれの有名出版物から提供されるコンテンツにフォーカスしていました。コンデナスト社は、視聴者はプラットフォームの種類ではなく、コンテンツの質に注目していると指摘、コンテンツの充実がひいては視聴者の発見やエンゲージメントにつながると述べました。また同社は、コンテンツとともに広告掲出する、NBCユニバーサルのONE Platformに似た「Influence Network」についても発表しました。メレディス社は、ターゲティング機能にも注力しており、同社のサイトで消費者が何十億ものインタラクションを行っていることから、Cookieに依存しないオーディエンス・セグメントの作成に必要なデータを保有していることに言及。これは、Cookieが段階的に廃止されていく中で、その価値を大きく高めるものでしょう。
  • YouTube - YouTubeは、IAB NewFronts週間中にBrandcastプレゼンテーションを行い、視聴者にストリーミングビデオコンテンツが成長していること、そしてYouTubeが依然としてNo.1のビデオコンテンツプロバイダーであることを伝えました。YouTubeが殊更強調していたのは、人々がYouTubeを見るデバイスの変化です;以前よりも多くの人々がテレビでYouTubeを視聴しているとのこと。「YouTube proper」、「YouTube Shorts Player」、「YouTube Originals」、「YouTube TV」など、YouTubeは「リビングルーム」と呼ばれる場所での体験を可能な限り強化するために投資していることがわかります。また、新しい広告タイプとして、YouTubeは、消費者が見ているものを中断することなく製品についての詳細を知ることができるブランドエクステンションを間もなく提供する予定です。

まとめ

1週間のプレゼンテーションから見えてきたことは、広告主にとって、新たなストリーミングサービスや成長中のウェブサイトなど、ターゲットとなるオーディエンスにリーチするための選択肢がこれまで以上に増えているということです。そのため、それぞれのキャンペーンとその目標に最適なパートナー、プラットフォーム、サービスを見極める戦略的なアプローチが非常に重要になってきます。これには、出稿に最も適したコンテンツを選ぶだけでなく、ユニークで正確なターゲティングサービスを提供できるパートナーを見つけることも含まれ、これは特にサードパーティCookieが廃止されていく中で非常に重要になってくることでしょう。

参考

■ IABホームページ:

■ Collective Measuresによる記事:


IAB Tech Labについて

IAB Tech Lab (The IAB Technology Laboratory) は、米国のインタラクティブ広告業界団体であるIABが設立した、デジタルメディアとデジタル広告業界におけるグローバルな技術標準の確立と導入を促進するための国際的な研究・開発のコンソーシアムです。CCIは2017年1月からTech Lab会員となっています。