技術広報しゅーぞーです。株式会社CARTA HOLDINGS(以下、CARTA)とBASE株式会社(以下、BASE)が共同で開催したイベント「FullCycleDevelopersNight #1 ~フルサイクル開発ってなんなん?~」の模様をお届けします!
「FullCycleDevelopersNight」とは
「FullCycleDevelopersNight #1 ~フルサイクル開発ってなんなん?~」は、BASEとCARTA HOLDINGSが共同で開催したエンジニア向けミートアップです。Netflixが2018年に提唱した「フルサイクル開発者(Full Cycle Developer)」というエンジニアのあり方について、そのリアルな実践例や課題、そして可能性について深く掘り下げる場として開催されました。詳細は以下ページをご覧ください。
FullCycleDevelopersNight #1 ~フルサイクル開発ってなんなん?~ - connpass
本レポートでは、当日の模様と登壇で語られた「フルサイクル開発」について、実際のトーク内容も交えてお伝えします。
🔑 キーコンセプト
本イベントのテーマは「フルサイクル開発ってなんなん?~ビジネスから開発まで「全部やる」リアルとは?」。
「フルサイクル開発者」とは、Netflixが提唱した「Full Cycle Developer」という概念であり、コードを書くだけでなく、設計から運用、ビジネス要件の本質を見抜き、真の顧客ニーズを掘り下げることまで、製品のライフサイクル全体に責任を持つエンジニアのあり方です。技術領域を越えて柔軟に対応し、自らのコードをテスト・リリースし、運用・改善まで行います。
本イベントでは、フルサイクル開発を実践している企業のエンジニアによる経験談の共有を通じて、この新しいエンジニアリングの形がもたらす可能性と課題について深く掘り下げました。
✨ 開催概要
- 開催日:2025年5月15日(木)19:00 ~ 22:00
- 形式:オフライン
- 会場:CARTA イベントスペース
- 主催:BASE、CARTA HOLDINGS
- 登壇者:斉藤裕気氏(BASE)、なっかー氏(CARTA HOLDINGS fluct)
登壇セッション1:斉藤 裕気氏「なぜフルサイクルエンジニアを目指すのか 〜 少人数で価値を届け続ける組織をつくる 〜」
BASE BANK Department 開発責任者である斉藤裕気氏が登壇し、BASE社がなぜフルサイクルエンジニアを目指すのか、そしてそれが組織や個人のキャリアにどのような影響を与えるのかについて語りました。
👇️登壇内容のブログはこちら devblog.thebase.in
登壇の要点
BASE BANKが考えるフルサイクルエンジニアとは、ソフトウェアライフサイクルの全域に責任を持ち、ユーザーに価値を届けることにフォーカスするエンジニアです。フルサイクルエンジニアを目指す理由は大きく3つあります。
1つ目は全体最適のためです。部分最適ではなく、ソフトウェアライフサイクル全体を俯瞰し、真のボトルネックを解消することができます。
2つ目は少人数で新規事業の仮説検証を高速に実現するためです。個々のエンジニアが広範囲をカバーすることで、コストを抑えつつ迅速に仮説検証を回すことが可能になります。
3つ目は成長しながら、開発を楽しむためです。「なぜつくるのか」からリリース後のフィードバックまで一気通貫で関わることで、深い学びと開発の面白さに繋がります。
このようにフルサイクルエンジニアが集まると「越境が当たり前」になり、「オーナーシップが生まれる」強いチームが形成されます。
エンジニアがライフサイクル全体に関わり、PdMやデザイナーと協力して少人数で素早くサイクルを回すことが新規事業成功の鍵であり、実装の背景やリリース結果を深く理解することで開発がより創造的で面白くなるという魅力が語られました。
登壇セッション2:なっかー氏「正解のない未知(インボイス制度対応)をフルサイクル開発で乗り越える方法」
CARTA HOLDINGS fluct プロダクト開発本部のなっかー氏が登壇し、自身が推進した「インボイス制度対応」という具体的なプロジェクトを例に、フルサイクルエンジニアとして未知の課題にどのように立ち向かい、解決へと導いたのか、そのリアルな体験を語りました。
登壇の要点
インボイス制度という「正解のない未知」の課題に対して、フルサイクル開発のアプローチで取り組んだ具体例を紹介しました。会計システムの担当者として、タスクとして明確に指示される前から主体的に課題を認識し、対応を開始しました。
エンジニア自身が法務や経理といった専門外の領域にも踏み込んで情報を収集・理解し、関係部署と密に連携しました。時には自らが一番詳しくなるくらいの気概で臨みました。経営陣に対しては複数の対応策をPros/Consと共に提示し、意思決定をサポートしました。単に指示を待つのではなく、最適な解決策を主体的に考え、提案する姿勢を貫きました。
また、プロダクトに関わる全部署のメンバーが制度を理解できるよう、エンジニア主導で社内説明会を実施しました。フルサイクル開発とは「プロダクトライフサイクル全体に関わる」ことであり、「プロダクト/事業の成長にとって必要なことを全部やる」というマインドセットが重要であることを実践を通じて示しました。
「主語を広く、複数持つ」「主体的に動く」ことで、「自然とやるべきことが分かる」ようになり、それがフルサイクルな働き方に繋がる というメッセージを伝えていました。
パネルディスカッション
パネルディスカッションでは、フルサイクルエンジニアに関する様々な疑問や懸念について、登壇者と参加者を交えて活発な議論が展開されました。
・フルサイクル・フルスタックの違い、 PdMと違うのか? ・フルサイクルエンジニアは全員がビジネスサイドと関わる?その関わり方は? ・フルサイクルエンジニアを求めると採用が大変なのでは? ・フルサイクルエンジニアだと器用貧乏になってエンジニアとしてキャリアに繋がらないか不安
フルサイクルとフルスタックの違い
「フルスタックは技術スタックの幅広さを示す言葉ですが、フルサイクルはそれ以上に、ビジネスへの深い理解とコミットメント、そしてプロダクトの成功に対するオーナーシップを持つことを意味します」と斉藤氏。なっかー氏も「フルサイクルエンジニアは、単に技術的なスキルだけでなく、ビジネス全体を理解し、その中で自分が何をすべきかを考えられるエンジニア」と補足しました。
フルサイクルに動いていたらコードを書かずに解決できることが多いので、求められる技術力が広義になりがち
— R.KITA / kicchan (@rkita_12) 2025年5月15日
#full_cycle_night
ビジネスサイドとの関わり方
「フルサイクルエンジニアは全員がビジネスサイドと関わる必要があるのか」という質問に対して、斉藤氏は「必ずしも全員が同じレベルで関わる必要はないが、プロダクトの成功に責任を持つという意識は全員が持つべき」と回答。なっかー氏も「自分が担当する領域で、ビジネスにどのように貢献できるかを常に考え、行動することが重要」と述べました。
フルサイクルエンジニアが企画から関わるとはどういうことなのか!
— 柳川慶太@BASE BANK (@gimupop) 2025年5月15日
ゼロから企画を作ることだけが企画じゃない!
不安な企画者に良い問いかけができるか!良い問いかけは企画です。
良いチームは問いかけが行き交うチーム。
良い問いかけをするには知らないといけない。#full_cycle_night
採用の難しさ
「フルサイクルエンジニアを求めると採用が大変なのでは」という懸念に対して、斉藤氏は「確かに採用は簡単ではないが、組織としてフルサイクル開発の文化を育て、一人一人のエンジニアが成長できる環境を整えることが重要」と指摘。なっかー氏も「採用だけでなく、既存のエンジニアがフルサイクル開発に取り組めるよう、サポートする仕組みが必要」と補足しました。
責任や影響範囲が広い仕事任せて、振り返って、その人よりグレート高い人がこうできるよね、っていうのを伝えるを繰り返して、その人の自分でのリード像が出来上がっていく
— 02 (@cocoeyes02) 2025年5月15日
やっぱ場数と振り返りですよねえ
#full_cycle_night
器用貧乏の不安
「フルサイクルエンジニアだと器用貧乏になってエンジニアとしてキャリアに繋がらないか不安」という質問に対して、斉藤氏は「器用貧乏ではなく、幅広い視野と深い専門性を兼ね備えたエンジニアになることが目標」と回答。なっかー氏も「フルサイクル開発を通じて得られる経験は、エンジニアとしてのキャリアをより豊かにする」と述べました。
#full_cycle_night
— rockcutter (@rockcutter_c) 2025年5月15日
全部やるの全部を見つけるのにも、主語を複数持って視野を広げる必要があるなぁ
パネルディスカッションを通じて、フルサイクルエンジニアという考え方が、単なるスキルの幅広さに留まらず、ビジネスへの深い理解とコミットメント、そしてプロダクトの成功に対するオーナーシップを持つエンジニアリング文化であることが改めて確認されました。
まとめ
今回の「FullCycleDevelopersNight #1」は、フルサイクル開発という考え方が、単なるスキルの幅広さ(フルスタック)に留まらず、ビジネスへの深い理解とコミットメント、そしてプロダクトの成功に対するオーナーシップを持つエンジニアリング文化であることを改めて認識させられるイベントでした。
「ユーザーに価値を届けることを第一に考える」「職域の壁を越えて主体的に動く」「チーム全体でプロダクトを成長させる」といった視点は、CARTAおよびBASEがエンジニアリング組織として大切にしている価値観そのものです。今後も継続して実施したいと思います!