現状維持に甘んじずデータドリブン経営への道を切り拓く。CARTA MARKETING FIRMの進化を生むコーポレートエンジニア

前回は、CARTA MARKETING FIRMの4社統合による組織の変革と、その中で生まれた課題について、CTO / DX推進局長の河村にお話を伺いました。

後編となる今回は、その具体的な取り組みの詳細と、CARTA MARKETING FIRMが目指す未来像について実際に課題に向き合っている石切山により深く掘り下げて聞いていきます。

登場人物

石切山 開(いしきりやま かい)

2014年 ヤフー株式会社に新卒入社。情報システム部門、セキュリティ部門、開発基盤部門を経験。2020年 株式会社VOYAGE GROUPに入社し、セキュリティチーム立ち上げと会社統合に向けた社内基盤構築を担当。2024年より株式会社CARTA MARKETING FIRMにてDX推進局でコーポレートエンジニアとして活動中。趣味はキャンプと登山、釣り。

データドリブン経営のためのデータ基盤整備

--石切山さんは現在、CARTA MARKETING FIRMでどのような役割を担っていますか?

私の役割は、データ基盤構築の推進支援、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)、データ・セキュリティガバナンスの確立など多岐にわたります。特に現在注力しているのが、経営数値管理の安定化です。チャレンジングな部分は技術的な課題解決だけでなく、各部門の"やり方"や"文化"に関わり大きく変えていくこと。それは簡単なことでは有りません。でも、だからこそやりがいがありますね。

業務改革、システム利活用、データ統合への挑戦

--背景と現状の課題について詳しく教えてください。

CARTA MARKETING FIRMは4つの会社が統合してできた組織です。統合前は各社がそれぞれ独自の方法でデータ管理をしており、月次の集計作業だけでも数日を要していました。例えば、請求管理のプロセスでは、営業がデータを入力し、それをファイナンス部門が加工・変換するという作業が随所で行われていました。

--それは大変な作業ですね。経営判断にも影響があったのでは?

まさにその通りです。このデータ連携の問題は単なる「面倒な作業」にとどまらず、事業の方向性を判断するために必要な情報が集計が終わるまで見えない状況でした。

--その時点ではどのような状態だったのでしょうか?

はい。その時点で、実はすでにSalesforce自体は導入されていました。ですが、データオーナーが決まっておらず個々の部署のやり方で管理している状態でした。活用を選んだのは、すでに社内に導入されていること、また、単なるCRMツールとしてではなく、全社のデータ統合プラットフォームとしての可能性を見たから です。APIによる外部連携の柔軟性や、カスタマイズの自由度が高く、我々が段階的に進めるリアーキテクティングアプローチに適していました。

技術的には、既存のシステムからのデータ移行、マスターデータ管理の設計、APIを活用した他システムとの連携、そして自動化されたワークフローの構築という多層的な課題に取り組んでいます。

Salesforceを活用して、人間による判断が必要な部分のみに集中させるアーキテクチャを構築しています。 そもそも請求書を発行するために必要な情報はさほど多くないので、代理店やクライアントのメタデータがまとまっている場所を作り、営業もファイナンス部門もおなじ場所から情報を取り出し、半自動的に処理が可能な状態に持っていきました。

--業務フローの変更も必要だったのではないですか?

CARTA MARKETING FIRMの組織構成

その通りです。具体的には、まず代理店向き合いと国内直接販売における受注登録をSalesforceで行うように変更し、そこから直接請求書を発行できるよう業務フローを整理しました。これにより、以前は各部門が個別に行っていた作業を減らし、システム上で自然に連携できるようになりました。

我々が直面している課題の解決策として、マスターデータマネジメントという概念に注目しています。これは単なるデータ管理ツールではなく、組織全体でマスタデータを中央集権的に管理し、その品質を維持していくことができます。それを実現することで、組織固有の文脈や解釈の違いを吸収しながら、なおかつデータの品質を担保できる柔軟な管理が可能となります。そういった「データの上で価値を出す」部分については、データエンジニアと協業しながらデータ基盤を作っています。

--技術以外の面での難しさはありますか?

最も大きなトライは、技術的な課題よりも「何年も続いてきた業務のやり方」を変えることです。河村も言っていましたが「人々の当たり前」を変えるためにはこれまでのやり方を基盤から変え、新たなやりかたにパラダイムシフトして貰う必要があります。コードを書く以上に、人と組織の理解が必要な挑戦ですが、だからこそやりがいがありますね。

CTO 兼 DX推進局 局長 河村(左) と 石切山(右)

データドリブンと経営基盤構築を支える組織間連携

--このような大規模なプロジェクトは、石切山さんひとりで進めているわけではないと思います。データエンジニアやファイナンス部門、営業組織との連携について教えていただけますか?

データエンジニアとの連携は不可欠です。彼らがSalesforceにデータを活用する仕組みを作っていますが、そのためにはまず我々コーポレートエンジニアがデータを入れる業務フローを整える必要があります。データが整ったあとにデータエンジニアに入ってもらい、有効活用できる状態にしてもらう。そのような役割分担になっています。

CARTA MARKETING FIRM内における立ち位置

また、ファイナンス部門とも密に連携しています。彼らの要望や現在の仕事の進め方を聞きながら、会計データの一元化を進めています。営業組織とも協力し、彼らの業務フローに合わせたシステム設計を心がけています。

--なるほど。事業部内だけでも多様な部署との関わりがあるんですね。ホールディングスとの協業についても伺えますか?

はい。CARTA MARKETING FIRMは、CARTA HOLDINGS(以下、HD)の1事業です。事業部の中でバックオフィスが完結するわけではなく、HDのバックオフィスと協業しながら進めるような体制になっています。例えば、法務やHR、ICT、ファイナンスなど、様々な機能をHDと連携して進めています。事業部としてもHDバックオフィスとしてもやりやすい業務フローをすり合わせながら発見していくような、そんな姿勢も求められます。

--取り組みの領域はファイナンス領域にとどまらないと聞きました。他の取り組みについても教えて下さい。

CARTA MARKETING FIRMのDX推進局の仕事は、会計領域だけでなく、HR領域にも及んでいます。HR領域ではよくタレントマネジメントの必要性が叫ばれますが、私は本当に必要なのは評価基準とフィードバックの基準だと考えています。これは採用の基準にも直結する問題で、現状それらを一気通貫にできるようにHRと協業で進めています。

エンジニアリング以外の領域の課題解決においても、小手先の業務改善ではなく、根本的な部分からエンジニアリング視点で改善に取り組む必要があります。例えば、組織間のやりとりのインターフェース定義や業務プロセスの詳細設計といったドメイン設計する力、どれだけ多くのエッジケース・テストケースを考えられるか、例外をどこまで捕捉できるか、業務上のエラーケースを正常系に取り込めるかなど、例外設計の観点も必要です。

これらを踏まえて取り組むことで効率の良い組織を作っていくことができる。実際にコードを書かなくても、エンジニアリングの観点やプラクティスは非常に有効に働くと思っています。

今後の展望: データドリブンな経営基盤の構築

--今後はどのような展望を考えていますか?

私たちが目指しているのは、データドリブンの経営です。単なるシステムの置き換えではありません。CARTA MARKETING FIRMの事業構造そのものを、よりデータ中心に再構築し、事業や組織構造の変化に耐えうる柔軟なアーキテクチャを構築することです。広告主にとってのマーケティングパートナーとして強みを発揮するためには、データに基づいた意思決定が不可欠だと考えています。ビジネスとしては当然、売上総利益を伸ばしていくことが重要であり、そのためには販管費を適切にコントロールする必要があります。

これを実現するために、業務の効率化・自動化を進め、意思決定に必要な情報を必要なタイミングで取得できる環境を整備していく必要があります。具体的には、Salesforceを中心的なプラットフォームとして位置づけ、そこにあらゆる情報を集約していきたいと考えています。これは単なるデータの集約ではなく、経営判断に必要な情報をリアルタイムで提供できる基盤づくりだと考えています。

最終的に望む姿はデータの民主化です。経営陣も営業個人も、あるいはバックオフィスも同じデータを見て議論できる環境を構築することで、リアルタイムでの経営判断と迅速な戦略転換が可能になります。ただし、実際には機密性の高いデータも存在するため、アクセス権限の管理は不可欠です。適切なアクセス権限管理を講じながら、必要な情報を必要な人が利用できる状態を目指しています。さらに、社員一人ひとりの創造性を最大限に引き出す業務環境を整えることも重要だと考えています。

これらの取り組みは、CARTA MARKETING FIRMをより強固で柔軟な組織に変えていくはずです。そして、その過程で私たち自身も大きく成長できると確信しています。それが、この仕事の最大の魅力だと思います。

CARTA MARKETING FIRMでコーポレートエンジニアをやる理由

--最後に、石切山さんがCARTA MARKETING FIRMでコーポレートエンジニアをやる理由を教えて下さい。

石切山:はい。CARTA MARKETING FIRMでコーポレートエンジニアとして働く面白さは、まさにこの未整備の環境から0→1にしていくプロセスにあります。

我々は単に物事を「管理」したいわけではありません。 契約管理、人事管理、会計管理、ITガバナンスなど、様々な領域で取り組んでいますが、これらはすべて理想の状態やネクストアクションにつなげるための手段です。未整備の環境から組織全体の成長と効率化を支える価値を生み出すこのプロセスこそ、私たちの仕事の醍醐味だと考えています。

CARTA MARKETING FIRMのコーポレートエンジニアリングは、単なる「守り」の役割ではありません。 事業会社のコーポレートとして、「攻め」の姿勢も必要です。 利益最大化の観点は絶対にぶらさず、理想と現実のバランスを取りながら、経営陣とも密に連携して進めています。また、データドリブンな経営を目指すため、データ基盤チームやその他バックオフィスの専門家とも協力しています。プロダクトチームも自律的に動いており、それ以外のコーポレート業務は我々が全面的にサポートしています。

この規模の組織でこれらの課題に取り組むのは非常にチャレンジングです。2025年7月に行う統合によって、更に大きくなりいきなり800人規模の組織を目指して基盤を作っていくわけですから。しかし、このチャレンジングな領域に一緒に取り組み、トライアンドエラーを繰り返しながら成長していく文化を作りたいと考えています。

未来を描き、そこに向かって一緒にコミットしてくれる仲間を待っています。

--石切山さん、ありがとうございました!


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