【小話】アーキテクチャ?

気晴らしのための小話です。

ご笑覧下さい。

二人のアーキテクト

山奥に引きこもっていたアーキテクトが新宿駅の雑踏に揉まれながら呟く

「この都市のアーキテクチャはいったいどうなっているんだ!」

要するに”迷子になっちゃった 💧”と。

都会で遭難しかけている山男の様は迷える子羊なんて可愛いものではなく、タールの沼にはまった山羊とでもいったところか。

「あなたにはシンプルなモデルが必要ですね。」

通りすがりの渋谷で働くアーキテクトがアキバにでも行きたいのだろうと親切にも声をかけて山手線の路線図を渡してくれる。

いたるところから漂う技術的負債の悪臭に圧倒されていた山男のアーキテクトは気を取り直して「東銀座のCCIに呼び出されたんだった」と来京の目的を思い出し、手渡された路線図を眺める。

円とそれを貫く直線。

なるほど、シンプルで美し ぃ?

「むむ、この醜くはみ出した鼻毛は何だ?」

秋葉原を目指している迷子と見極めた慧眼のアーキテクトがせっかちな山羊ならぬ山男がうっかり快速に乗車し混乱を深める事態を見越してさりげなく書き加えたお茶の水と神田を結ぶ中央線にまんまと注意を奪われかけたが流石はアーキテクト、細部への拘りを戒めて俯瞰に努めることしばし...

重大な欠陥に気が付き愕然とする。

「銀座がない!!!」

ああ、どうしたことでしょう。

このあと引きこもりのアーキテクトは無事東銀座にたどり着けたでしょうか。

AsIs

スマホの傀儡に堕して指図されるままになることは頑なに拒む山男

「ええいお金で解決だ!」タクシーを拾ってはみたものの、腹をくくって大胆になった勢い「最短ルートで!」押し通し、世慣れた運転手は面倒そうな客にハイハイと汐留経由で迂回することもせず銀座のど真ん中を突っ切ったものだから案の定渋滞に巻き込まれ、メータが上がるたびにイライラさせられたあげく大幅に遅刻した。

なんてところでしょうか。

アーキテクチャ?

本題がおそろかになってしまいました。

アーキテクチャでした。

アーキテクチャ。

あらゆる技術的災厄と混沌の根源にして壮麗なシステムを稼働させつづける力の源。

お歴々を前に一言唱えればややこしい議論も封殺できるこのマジックワードは唱えた当人をも束縛する呪い。

とかなんとか...

ざっくりと言ってしまえば「構造」でしょうか。

ところで「構造」を直接見ることはできるでしょうか?

多くの場合、詳細に埋もれて「構造」を直接見ることはできません。

存在するのに見えない。神秘です。

奉って済ませられないので何とか表現しないといけません。

表現するためには見なくて良いものを取り払う「抽象」です。

取捨選択する作業になります。

「構造」の表現は人が意図と意思をもって取り組む作業の産物です。

関心は移ろいやすく、作業を進めるに従い観点も移動し複数の視界が干渉していきます。

認知の限界と表現力の限界があります。

人の作業の産物である以上、適度なところで満足することが肝要でしょう。

パターンやアーキテクチャスタイルを適用することで見通しを良くし、手がかりを付けることができます。

ただしアーキテクチャは各々のシステム固有に存在するはずです。

アーキテクチャは組織を反映するといわれます。

組織はアーキテクチャを反映するともいわれます。

ところで組織は戦略に従うといわれます。

戦略は組織に従うともいわれます。

いずれにせよ、より良いアーキテクチャを探求するためには企業・事業の戦略を探求することも必要になることでしょう。

小話から大きな話になってきてしまいました。

二人のアーキテクト、再び

冒頭の小話にもどります。

山男のアーキテクトさん。

野生の勘と周囲の善意でなんとかなってきたのでしょうが、迂闊過ぎました。

「都会だし超有名な銀座の近くなんだからどうとでもなるでしょう。」なんて高を括っていたのかもしれません。

それにしても、思わず口走ったとはいえ都市のアーキテクチャなんて大それたものは必要ないでしょうね。。

渋谷の親切なアーキテクトさん、概ね方向は合ってますがおしかったです。

風体からして「まさか銀座なんてねぇ」といったところでしょうか。

山手線、大抵の場所にはだとりつける良いモデルなのですがオールマイティではありませんでした。

地下鉄の路線図を加えると途端に複雑にもつれ合った迷路になるので難しいところではあります。

ToBe

新宿から東銀座を目指すルートは数多ありますが分かり易さを優先すると、渋谷駅でその名も銀座線に乗り換えて銀座駅を降りたら中央通りを背に築地方面に徒歩数分、歌舞伎座を目指せば東銀座です。

JR、地下鉄、市街の3つのレイヤーをまたがるわけですが目的地が定まっていると意外とシンプルにまとまります。

銀座駅から東銀座まで歩くことになりますが、健脚な山男にとってはどうということはないでしょう。

よもや歌舞伎座なんてど派手なランドマークを見落とすことはあり得ません。

仮に、ちょっとした好奇心から脇道にそれて行列のできるラーメン屋さんやパン屋さんやバナナジュース屋さんの誘惑に道を誤ったとしても、身軽ななりで「今日のランチも美味かった」と満足感に浸りのほほんとしているサラリーマンに歌舞伎座はどちらと尋ねればたちどころに解決するというものです。

完璧だ!

結局のところコミュニケーションが少しだけ足りなかったのでしょうね。

顛末

意気揚々と渋谷駅で山手線のホームを降りた山男。

あらら、地下鉄って聞いたものだから人混みに流されるまま地下へ降りてっちゃった!

その先は最新のダンジョンです。。

何のスキルも得られない小話に最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございます。

寛大な心でお読みになられた皆様にお礼を申し上げます。

東銀座界隈を徘徊しているとよく道を尋ねられる山男でした。