
CARTA HOLDINGS の Lighthouse Studio は、「神ゲー攻略」や「Kaubel」などのメディアを運営している事業部です。この記事では、Lighthouse Studio の開発チームにおける生成 AI 活用の紹介と考察についてお話しします。
3行まとめ
- Lighthouse Studio の開発チームでは、生成 AI を活用して生産性を高める方針を打ち出した
- 開発チーム全員が生成 AI のツールを使えるよう環境を整えつつ、検証を通じて自律型 AI エージェント devin.ai の可能性を探った
- 自律型 AI エージェントを活用することで作業時間や費用を削減できる一方、タスク分解やマネジメント力といった人間のスキルも重要だとわかった
対象となる読者
- 生成 AI の活用に興味がある方
生成 AI の導入方針
Lighthouse Studio では 1 月に、「生成 AI の本格的な活用を始めて生産性を高める」という方針を定めました。 この方針に沿って、チーム全体で生成 AI のベストプラクティスを身につけ、組織として活用しやすい環境を整えることを目指しています。
これまではメンバーごとにバラバラで生成 AI を試しながら、有用な使い方を探っている状態でした。 しかし、新方針のもとでチームとして共通認識を持ち、より効果的に使うことが重要だと考えました。 また、生成 AI の利用にかかるコストについても事業部として支援し、積極的に活用してもらえる仕組みが必要だと考えました。
今回の取り組みでは、生成 AI の中でも開発を支援する AI エージェント の活用に力を入れました。
AI エージェントの活用
AI エージェントは「支援型 AI エージェント」と「自律型 AI エージェント」の 2 種類に分類し、それぞれの活用に注力しました。
- 支援型 AI エージェント: Cline や GitHub Copilot のように、人間の特定タスクをサポートするタイプ
- 自律型 AI エージェント: Devin や ChatGPT Deep Research のように、自らタスクを実行したり、情報収集を行ってレポートをまとめたりするタイプ
当事業部では、まず開発メンバー全員が支援型 AI エージェントを使える環境を整え、同時に自律型 AI エージェントの可能性を探るという二段階のアプローチを取りました。
支援型 AI エージェントの導入
支援型 AI エージェントを導入するにあたり、開発チームでの “標準装備” とするルールを設け、事業部が導入サポートを行う制度を整えました。 具体的には、GitHub Copilot と Cline を標準装備と定めています。
会社全体で既に Copilot を利用できる仕組みはありましたが、当事業部では雇用形態などの理由で対象外となるメンバーも存在していたため、より多くの開発環境で活用できるよう整備しました。 また、VSCode 以外のエディターを使うメンバーもいるため、Cline と同等の機能があれば利用OKというルールにしています。
こうした取り組みにより、開発チームのほとんどのエンジニアが支援型 AI エージェントを利用できるようになりました。 定量的な成果はまだ測れていませんが、メンバーからは「かなり役立っている」という声が上がっています。
自律型 AI エージェント「Devin」の検証
自律型 AI エージェントについては、会社全体で Devin のトライアル検証を始めたタイミングだったため、当事業部の開発チームもこの検証に参加する形で実施することにしました。
Devin は人間からの指示に従って自律的にタスクを遂行できる AI エージェントです。具体的には、Slack でタスクを依頼すると PR を作ってくれます。
検証では、一人あたり週 3 回は Devin にチャットするというルールを設け、使い方や感想、評価などを毎週共有する形を取りました。
検証結果(概要)
「人間だけで実施」VS「Devin + Devin が失敗したタスクを人間がやる」という比較を実施したところ、以下の結果になりました。
- 人間の作業時間(推定): 約 18.9% 削減
- 費用(推定): 約 10.5% 削減
費用は人件費を仮に 100 万円と想定した際の概算です。
また、Devin のタスクの成功率は以下のようになりました。
- Devin の成功率: 67%
- 成功の定義:「Devin が作成した PR がマージされた or Devin のアウトプットで人間の作業消えた 」
今回は「とにかく使い倒す」形の検証でしたが、それでも一定の価値があることがわかりました。
Devin の費用対効果を高めるには
Devin の費用対効果を高めるには、以下の 2 点が重要だと考えています。
- エージェント自体の成功率を上げる
- 人間のサポート時間を減らす
Devin の性能向上にも期待していますが、人間側がタスクをしっかり分解したり、背景情報を言語化したりするスキルも求められます。
AI エージェントの使い分けの考察
現在は、おおまかに以下のような使い分けを想定しています。
- 難易度が高いタスク: 人間と支援型 AI エージェントが連携し、より質の高いアウトプットを目指す
- 難易度が低いタスク: 人間が手を取られないよう、自律型 AI エージェントに積極的に任せる
こうすることで、人間と支援型 AI エージェントは高度なタスクに専念し、全体として生産性を高めることができるのではないかと考えています。
自律型 AI エージェント活用における人間の役割
自律型 AI エージェント(特に Devin)を使う際、必ず人間のサポートが必要になる場面があります。 そのサポートが作業のブロッカーになる可能性もあるため、自分の作業を進めつつエージェントを上手に活用する“AI マネジメントスキル”が求められます。
たとえば、終業直前やランチタイムなど、自分が手を離すタイミングでタスクを振り、その間に人間の作業を並行して進めるなどの工夫が考えられます。
まとめ
当事業部での AI エージェント活用はまだ始まったばかりですが、既にある程度の価値を出すことができました。 今後も利用を推進しながらノウハウを蓄積し、さらに効率的な運用を目指していきたいと考えています。
最近、Devin 2.0 もリリースされたので試していく予定です。



