CARTAのエンジニア組織、ひいてはテクノロジーに対する将来への指針として、CARTA Tech Visionを作成しました

こんにちは!CTOのsuzukenこと鈴木です。この度、CARTA HOLDINGSとして新しく、エンジニア組織、ひいてはテクノロジーに関する将来への指針としてTech Visionをつくりました。

ここでは社内に向けたメッセージもそのままに、どのように考えてこのTech Visionをつくったのか、というのを載せてみています。オープン社内報的に読んでいただけると幸いです。


昨年末からエンジニア組織、あるいはCARTAとしてのテクノロジーに関する価値観、将来といったものをどう描こうか、と考え続けてきました。

CARTAではエンジニアリングに携わるメンバーが170人程度います。来年、あるいはその次の年にもどんどん新しい人も入ってきます。そのときに「CARTAのエンジニア組織はどこに向かうのか?」「どうなっていきたいのか?」という問いに答えなければならない。何より、自分自身が「こうしていきたい」というものを言語化したいとずっと思っていました。面接の場で、外の場で、そして何より大事なエンジニアのメンバーと話すときに、「こういうエンジニア組織にしていきたい」ということにちゃんと答えたい。そう思っていました。

毎回のTech Board*1定例でも議論を重ね、メンバーからドラフト版へのコメントももらいました。ようやく「これが私たちの価値観である」と言い得るものをひねり出せたと思っています。いま自分自身でもここまで出すのが精一杯です。もっともっとうまい言い表し方、もっともっと素敵な未来像、そういう言葉もあると思います。しかしながら、現時点で考え抜いた限り、これが現状で想像し得る私たちらしいTech Visionではないか、と思えるものを書き上げられました。

これから、もっと多くの事業、プロダクト、サービスを作っていきます。まだ知らない領域、やったことがないこと、まだあったことのない人たちと一緒になにかを作っていく機会がどんどん生まれてきます。その中で、プロダクトを作る精神性を、技術に携わるみなさんの想いを乗せられる言葉に育て、このTech Vision自体も進化させていきたいと思っています。留まるのではなく、Tech Vision自体も、自由闊達な議論を通じ、どんどんしかるべき形にアップデートしていきたいと考えています。

以下がTech Vision本文です。

techblog.cartaholdings.co.jp

現時点のスナップショットとして、この記事にも載せておきます。


CARTA Tech Vision

CARTA Tech Visionとは、CARTA HOLDINGSのエンジニア組織、ひいてはテクノロジーに関する将来への指針です。私たちのありよう、大切にしている価値観について言語化し、将来へのあるべき姿を書いています。

またこのTech Vision自体も、私たち自身の進化とともに日々進化させていきます。

未来像

人にもっと、創造的な仕事を

私たちは実現者です。私たちは技術と真摯に向き合い、世界をより良くしたいと考えています。私たちは技術を磨き、世の中と向き合い、課題を見つけます。人々が考え、解く力を私たちは信じています。問題を楽しみ、チームで支え合いながら、実世界の課題を解決するのが私たちの仕事です。

価値観

私たちの価値観です。テクノロジーに向き合う組織として、大切にしている価値観です。

本質志向

何が本質的な課題であり、何が解くべき問題なのか。何をすべきで何をやらないべきか。私たちは徹底的に考え、判断し、前進します。役割により、着想が制約されるべきではありません。問題を解くために私たちはとことん調査し、議論し、自ら実行し、振り返ります。すべての時間は事業を進め、価値を生み出すためにあります。

共に信頼し、共に創る

私たちはチームの可能性を信じています。セールスも、開発も、運用も、経営者も、全員一緒になって価値提供をするために協力します。そして何より、一緒に働くことは楽しいことです。チームメンバーの想い・着想・実行力を信じ、任せ、期待します。密にコミュニケーションし、フィードバックし合い、個々人が成長し続けながら背中を預けて前進するのがCARTAのチームのあり方です。チームメンバーが困っていれば、私達はそれをサポートします。

価値を届け続ける

私たちは正解がわからない問題に日々向き合っています。良いと思った方法でも、すぐに陳腐化してしまうかもしれません。なので私たちは検証し、失敗から学び、次の改善を考え続けます。失敗から学ぶ仕組みに私たちは投資します。立てた仮説を検証し、チームの学びに変えることで私たちは前進します。小さく失敗し続けて道筋を探し、最短距離で価値を届けられる方法を探します。このサイクルに終わりはなく、また新しい挑戦が始まります。私たちの創意工夫、学習、改善は価値を誰かに届けるためにあります。

習慣

私たちが日々の仕事のなかで大切にしている習慣をまとめたものです。この項目は日々の実践のなかで改善され、追加されます。

質は速さ

「質とスピード」は相反するものではなく、表裏一体です。私たちは創業以来、ソフトウェアエンジニアリングを続けてきました。プロダクトを磨き続け、提供し続けてきました。内部品質に投資したからこそ、圧倒的なスピードで変化に対応することができるのです。私たちは徹底的にプロダクトの質に投資します。市場の要求に答え、成長し続けるプロダクトを作り上げるため、私たちは質に投資します。

推測するな、計測せよ

私たちは物事を決めるときにデータに基づいて議論します。仮説を立てるのと同時に、検証のための設計を始めます。データは客観的なフィードバックを私たちにもたらし、仮説の検証と学習をもたらします。私たちは効果的なフィードバックを得るための仕組みに投資します。バイアスを認識し、継続的な改善を可能にするため、私たちは計測します。

毎日試す

毎日、少しずつ改善すること。今日よりも「いい感じ」に近づけること。これは私たちの基礎であり、習慣であり、出発点です。経験し、学び、改善できることは私たちの強みであり、楽しみです。コードベースも、ソフトウェアも、サポートも、ルールも、プロダクトも、事業も。課題に向き合い、工夫しながら、改善を重ねます。なるべく早く失敗し、失敗する中で私たちは学び続けます。改善することは、次の改善に私たちを導いてくれます。

先人に感謝し、還元する

私たちもウェブや書籍、公開されたコードを通じて、多くの技術を学んできました。先人が残してくれた知の高速道路を通って、私たちも育てられてきました。CARTAがテクノロジーを使った事業を推進できているのは、先人が切り拓いてくれた道があったからです。CARTAは技術コミュニティに貢献し、テクノロジーに携わる人達を支援し、事業のなかで得た知識を還元します。

最良のコードは、コードなし

何かを作ることを考えるとき、何もコードを書かないで実現できるのは素晴らしいことです。私たちは作らないで実現することを優先します。そのために、「何が必要か」をたくさん聞き、考えます。その結果作るものがないならば、それは最高の選択です。コードがなければメンテナンスする必要もありません。


CARTA Tech Vision本文、ここまで。

以下になぜこの未来像、価値観、そして習慣にしたのかを僕なりの言葉で書いていきます。

未来像の背景

「未来像」はこの私たちの価値観がテクノロジー組織として深く浸透し、実践のなかで生かされていった未来にどういうものを作りたいか、を言葉にしたものです。

テクノロジーに携わった私たちが目指すべきはなにか・・そう考えたときに、やはり世界を何かしらの形で良くしたいと考えているのではないか。私たちが価値を提供し、そこでうまれたプロダクト、サービスが利便性を生み出し、結果として生み出された時間がまた創造性を生み出していく。あるいは実現したプロダクト自体が使ってくれる人の創造性を生み出してくれる。そういうものつくっていきたい。そう思っています。

CARTAとしてのミッションである「The Evolution Factory」はこれを「進化」というワードで表現しました。技術に携わる者として、実現する者として、「もっと創造的な仕事」を誰かが可能にしていくこと。それを喜び、作り上げていきたいと考えています。私たちは誰かが生み出すのを見ることが好きで、ものをどうしても作り上げたい。そして自分だけではなくチームメンバー、あるいは社内だけじゃなくて世の中全体にも新しいなにかを創造する時間自体をもっともっと増やしたい・・そういう願いをもっているのではないか・・という想いをこの言葉に込めています。

価値観の背景

価値観は3つ。「本質志向」「共に信頼し、共に創る」「価値を届け続ける」この3つです。

「本質志向」は私たちがものづくりに携わるなかで、もっとも大切な精神性です。いうなればテクノロジーを扱い、課題を解決する専門家としてのこだわりの強さの表現であり、私たちが個としてプロフェッショナルであるための姿勢です。抜粋すると、

何が本質的な課題であり、何が解くべき問題なのか。何をすべきで何をやらないべきか。私たちは徹底的に考え、判断し、前進します。

徹底的に考え抜き、やるべきことを紐解く。やり方がわからないなら調べ抜く。これを示しています。

「共に信頼し、共に創る」は現代のソフトウェアエンジニアリングにおいて私たちが最も重要であると考えるものであり、エンジニア組織たりうるための骨格です。ソフトウェアエンジニアリングはプログラミングではありません。プロダクトはどんどん複雑になり、コードは大きくなり、最小限の変更で最高の効果をだすための変更を私たちは重ねます。プロダクトだけでなく、システム・サービス・サポートも全部同じです。事業が大きくなればどんどん複雑になっていきます。その複雑性、規模を超えるために私たちはチームを作ります。なぜなら、

私たちはチームの可能性を信じています。

チームにおいて最も大切なのは信頼し合うことです。信頼することはすべての仕組み、ルール、目標設定、工夫よりも大切です。お互いに信頼しあってこそ、チームはチームとして可能なことが効果的に実行されます。信頼なして「共に創る」ことはできないと id:suzu_v は考えています。どんな手段も信頼なくしてはうまくいきません。

「価値を届け続ける」は3つの価値観のなかで1つだけ明確に時間の概念を持ち込んでいます。事業開発、あるいは組織における時間の共有のなかで私たちが実行しているのは、「価値を届ける」ことです。なんらかの価値を届けるからこそ私たちは工夫をし、考え、全身全霊で取り組んでいます。これ自体は「結果」に見えるかもしれません。たしかに価値を届けることは結果とも言えます。しかし「続ける」ことは私たちの強い価値観であり、文化を形成するために大きな役割を果たしています。もしあなたが取り組んでいることが誰かに価値を届け続けることにつながらないのなら、それは何かが間違っています。

そして価値を届け「続ける」こだわりがあるからこそ、私たちは「システム」を構想するのです。私たちは続けることにこだわります。続けることを志向するからこそ、実験があり、フィードバックがあり、改善があるのです。たくさん失敗し、たくさん学ぶために、変化への柔軟性を向上させることに取り組むのです。

私たちは正解がわからない問題に日々向き合っています。良いと思った方法でも、すぐに陳腐化してしまうかもしれません。なので私たちは検証し、失敗から学び、次の改善を考え続けます。失敗から学ぶ仕組みを私たちは投資します。

だからこそチームで、組織で学ぶのです。私たちは学びに投資します。すべての改善は「価値を届け続ける」ためにあります。そしてもちろん競合も、世界も、そうして改善されつづけます。競争環境下において、私たちは改善しなければ価値の提供は続けられなくなります。そういう環境下で事業をやっているし、戦っている。だからこそ続けることに向き合う「仕組み」を考えよう。そういうことをこの「価値を届け続ける」に込めています。

3つの価値観は3つ合わせて意味があります。CARTAにおいてテクノロジーで価値を届けるすべての人が大事にしていてほしい。そういう想いと願いを込めて書きました。

習慣について

CARTAのエンジニア組織において良しとされており、これまで明文化されておらず、しかしながら文化として尊重されるべきであり、社内外に向けて私たちの習慣を伝えるために書いています。

例えば「推測するな、計測せよ」はエンジニアリングに携わる人なら聞いたことがある人も多いでしょう。CARTAのなかで「良し」とされている習慣は、事業を続けてきた中で醸成されてきた学びであり、無意識のうちにこれを実践しているものです。まだこれらの習慣がない組織からみると、「誇れる」習慣とも言えるかもしれません。

「CARTAとして」というと難しく感じる人もいるでしょう。でもぜひ議論していきましょう。 id:suzu_v は常によい習慣を知りたいと思っていますし、何より実践している個人と話せることを嬉しく思っています。私たちは習慣を使って、チームやものごとの運営を良くしていくことができる組織です。これらの習慣が個々人、チームで100%満足に実施されていなくてもよいのです。これはチェックリストではなく、私たちが考える習慣です。これからの事業開発、組織運営のなかで新たな気付きや試した方法を学びに変え、私たちの習慣に追加し、更新していきましょう。

習慣は未来像や価値観よりも頻繁に更新することを想定しています。

結び

Tech Visionの策定にあたり、Tech Boardメンバー、そして多くのエンジニア陣と多くの議論を重ねました。なかなかTech Visionに込めたい想いを言語化し、最終的な形にするのに時間を要してしまいました。大変感謝しています。

Tech Visionはようやくスタートを切れました。ここが始まりです。みなさんと一緒に、この未来像、価値観、習慣について大いに語り、議論し、より深く文化を知り、作っていけることを楽しみにしています。ぜひ、たくさん話しましょう。ぜひ、「私の考える価値観」についても聞かせてください。たくさんのチームのこだわりを、聞かせてください。それがさらに僕たちを次の進化に向かわせる唯一の方法だと id:suzu_v は考えています。

これから先、より一層CARTAのエンジニア組織、ひいてはテクノロジーに対する将来のありようを熱く、面白く、生み出すことを楽しみに溢れる環境にしていくために取り組んでいきます。どうぞよろしくおねがいします!

*1:各事業子会社や本部などのCTO、技術の責任者に類するメンバーの集まる定例会議。CARTA全体の技術組織に関する会議体です。