こんにちは。技術広報の丹野です。 2020年8月7日に発売された『Engineers in VOYAGE 事業をエンジニアリングする技術者たち』(ハッシュタグ #voyagebook)ですが、その後多くの方々から素敵な感想/書評をいただきました。とてもありがたいですね。今回は本書の書評の中で取り上げていただく機会が多かったテーマについてまとめたいと思います。
頻出する3つのテーマとその書評
生々しい、ここまで公開していいのか
blogやTwitter、Facebookなどでの反響で特に目立つのは、「ここまで赤裸々に公開して大丈夫?」という趣旨のものです。 いずれもVOYAGE GROUPの現役のサービスに関する話題なので、過去に直面した課題のことが話されていても、現時点では解決しているか、解決に向かって進んでいます。そういう観点では安心してお読みください。
将来の状況の変化に伴う課題をあらかじめすべて想定して事業を始めることは、現実的には困難です。 そのなかで、開発者もまた事業の当事者として、システムの技術的な課題だけでなく事業の要請から生まれる課題にも取り組んできた結果が「生々しさ」につながっているのだと思います。 その生々しさがリアリティとして伝わったならうれしいです。
いくつか印象に残った書評を下記に引用させていただきました。
珠玉のエンジニアリング冒険譚 〜 書評「Engineers in VOYAGE 事業をエンジニアリングする技術者たち」 : 小野和俊のブログ
そしてこれらの課題に対して、それぞれのプロジェクトでどんな風に考え、どんな文化を大切にし、どんな苦労に直面しながら、これらを乗り越えてきたのかが記されている。その内容は「企業の名前を入れた本で、ここまで書いていいのか」と思えるほどに赤裸々だ。興味深いのは、テーマの重さと対照的に、課題を乗り越えるためのアイデアはほとんどすべてがしなやかさや遊び心を感じさせる軽やかなものだということだ。
Engineers in VOYAGEを読んだ - Diary over Finite Fields
生々しさゆえ、読んでいても爽快感を覚えることはない。しかし、事業に向きあう開発者を美化せずに描いているし、そして課題解決の過程がとてつもなく面白い。
Engineers in VOYAGE 読了。事業と向き合うエンジニアたちの思考、意思決定、行動、想いが生々しく赤裸々に綴られていてリアルに伝わってくる。泥臭くてもしっかりと事業を前に進める力が素晴らしい。
— yohei sugigami (@susieyy) August 9, 2020
技術力評価会の外部評価者を拝命したご縁もあり恵贈していただきました🙏https://t.co/Z8PWuyh2x3
この本は生々しい。
— 松岡 剛志 (@matsutakegohan1) August 6, 2020
本当に生々しい。
誰にも伝わらない例えでいうと、「北海道で鹿を撃ち、その腹からモツを出したときの匂い」にも近い生々しさがそこにはあります。
VOYAGEさんのインタビュー本マジで面白い。綺麗事じゃなくて、チームの歴史、技術選択や導入の流れとか、その時々でなぜその意思決定をしたか(しなかったか)が分かる。生々しくて面白い。
— Ryutaro YOSHIBA (@ryuzee) August 6, 2020
これはおすすめ度高い
Engineers in VOYAGEをお送りいただきました。ざっと @hagino3000 さんの章を読んだのですが、リアルワールドDSという感じで泥臭い生々しい話が詰まってて大変良いです。個人的に一番好きな所は @t_wada さんが確率的な振舞いをする処理のテストに言及する所です。(続 pic.twitter.com/RuOnB7H8K0
— Aki Ariga (@chezou) August 7, 2020
技術的負債との向き合い方:カッとなってやる短期決戦と腹を括ってやる長期戦
「技術的負債」というキーワードへの反応もたくさん頂戴しています。 インタビュワーの和田さん自身、本書の制作過程であらためてウォード・カニンガム氏による「技術的負債」のもともとの含意を手繰り寄せられたことからも、「技術的負債にどう取り組んでいくか」は本書の大きなテーマのひとつだったと言えるかもしれません。
特に、第3章のVOYAGE MARKETINGや、第5章のサポーターズのエピソードは、数多くの歴戦のWeb開発者の方々の心に響いたようです。 また、第1章のfluctでの「腕力」をめぐる和田さんの話に共感いただいたという声もいくつか拝見しました。 技術的負債との対峙という観点で印象に残った反響を下記に引用させていただきます。
カッとなってやる(短期決戦パターン。第1、2章)、腹を括ってやる(長期戦パターン。第3、5章)、どちらも出てくるのが #voyagebook の面白いところです https://t.co/7ks7IBHRxn
— Takuto Wada (@t_wada) September 1, 2020
fluct の事例では、”技術的負債の返却には腕力が必要” という言葉が登場するのですが、これは非常によくわかるなぁと感じました。こういった過去の辛さを改善していく作業は、ついカッとなってやれる人がいると進んでいくことってあるなぁと振り返ってみても感じます。
一方、ECナビの事例では戦略的に改善していく事例が紹介されていて、これをコツコツやれるのはすごいと感じました。その中で複雑すぎるテーブルの関連性をツールを使って可視化したけど複雑すぎることがわかっただけで有効活用されなかったという話はあるあるで好きでした。複雑なシステムをツールなどを使って可視化してみたけど、どうすればいいのかわからずそこで満足して終わってしまうことはよくありますが、そこから別のアプローチで進めていったのはとてもいい事例だなと感じました。
事業会社の現場 - 「Engineers in VOYAGE ― 事業をエンジニアリングする技術者たち」 - Shin x Blog
3 章は、それ以外にも、データベースのテーブル数を 1200 から 450 まで減らしたり、システムをスリム化していく流れでコード、機能、事業の削減(葬り)に分けて実施していくという骨太の内容でした。これを 5 年かけて通常業務と並行しながら除々に実施したというのは、大変ではありますが、粘り強く少しづつでも進めることで技術的負債を返却できるという一つの指針を見ることができました。
Engineers in VOYAGE - 事業をエンジニアリングする技術者たち - を読んだ
単に技術的な機能面だけはなく、事業ごと葬る、といったようにビジネスサイドとも合意を得て力強く進められていることがわかる。 このような経験・スキルは中で体験しているエンジニアでないと獲得しがたいものである。もちろん、書籍から得られる知見は表面上に限るかもしれないが、その内容について少しでも触れることができるという意味で、大変貴重な書籍である。
事業を作る人達の物語が最高だった #voyagebook - そーだいなるらくがき帳
要所でそれぞれの事業部がそれぞれの技術的負債に対して、どのように解決してきたかが書いてある。 そのアプローチは事業のフェーズ、規模によっても当然違ってくるが、それが各事業毎に違ったアプローチで書かれているのだが、それがとても参考になる。 リプレースなのか、リアーキテクチャなのか、リファクタリングなのか、それぞれ全く違うアプローチを1冊でそれぞれ見れる貴重な本だ。 今まさに技術的負債に立ち向かおうとしているのであれば一度は読んだ上で、アプローチの参考にしてほしい。
本:Engineers in VOYAGE - 事業をエンジニアリングする技術者たち|hidenorigoto|note
本書を読んで私が思うのは、VOYAGE GROUPは、負債の上手い乗りこなし方を身に付けているということです。事業開発という目的のためには、避けて通れない技術的負債の問題に対して、組織としての対応能力を磨いているように思います。
事業をエンジニアリングする
本書のサブタイトルにもある「事業をエンジニアリングする」という観点への反響もたくさん頂いています。 当初は『事業をエンジニアリングする技術者たち』のほうが本書のメインタイトルだと思われてしまう誤算もありましたが、 これはカバーの印象だけからくる勘違いではなく、やはり本書を実際に読んで感じて頂いたものが「事業をエンジニアリングする」というフレーズにとても合致していたからこそだと思います。
頂いた反響のなかにも、下記に引用させていただいたもののように、このフレーズに込めたメッセージを的確に読み取っていただけたと感じられるものがたくさんありました。
珠玉のエンジニアリング冒険譚 〜 書評「Engineers in VOYAGE 事業をエンジニアリングする技術者たち」 : 小野和俊のブログ
正論だけではまかりとおらない、事業という複雑で壮大な冒険をVOYAGEのエンジニアたちはどんな風にして生き抜いてきたのか。 本書のサブタイトルは「事業をエンジニアリングする技術者たち」。 そう。ここで登場するエンジニアたちは、ソフトウェアだけでなく、事業そのものをエンジニアリングしているのだ。
「Engineers in VOYAGE ― 事業をエンジニアリングする技術者たち」を読んだ #voyagebook | by Yuki Fujisaki / tnj | Medium
この本の中では、事業方針や組織体制と、開発して生まれるソフトウェアの設計は切っても切り離せない、コンウェイの法則的な話が何度か登場します。また、出てくるチームは大きさもバラバラで、文化もそれぞれ異なりっているのですが、事業としてのエンジニアリングを全員が認識しているのが自分の中では印象的で、フルスタックエンジニアではなくフルサイクルエンジニアの考え方を軸に置いているのが組織文化に繋がっているように感じました。
事業を作る人達の物語が最高だった #voyagebook - そーだいなるらくがき帳
5年、10年、15年モノの事業との付き合い方や0から始める新規事業との付き合い方、そしてそれぞれのフェーズで新しいことにチャレンジしていくために如何にビジネスを犠牲にせずに立ち向かっていくか。 そんな物語の中に哲学がある。
「事業をエンジニアリングする技術者たち Engineers in VOYAGE」を読みました
エンジニアが勝手に考えた「キレイなシステム」とか「最強のシステム」ではなく、ビジネスと照らし合わせた上で解決すべき課題を定義して改善するという進め方が全体としてあるように感じました。
エンジニアリングは事業のために行われるものであり、本書では様々なシステムや様々な状況の話が出てくるのですが、事業のためにという点が全ての共通点としてブレてない点に企業としての強さを感じました。この点については技術力評価会に参加している中でも感じたことだったので、本書を読んだ改めて納得した部分です。
事業会社の現場 - 「Engineers in VOYAGE ― 事業をエンジニアリングする技術者たち」 - Shin x Blog
インタビュイーである開発現場のエンジニアの方々が圧倒的な当事者意識を持って仕事に取り組まれているということです。これはシステムに対してだけでなく、事業に対しても同様です。事業会社で働くなら当たり前のことかもしれませんが、システム、さらにその目的である事業をいかに自分のこととして捉えられるかによって考え方も起こすアクションも変わってきます。
事業会社の現場 - 「Engineers in VOYAGE ― 事業をエンジニアリングする技術者たち」 - Shin x Blog
こうした当事者意識は本人の心持ちだけではなく、それを後押しする環境、文化にも影響を受けます。もし、自分がこうした意識を持とうとしても、すぐにボールを取り上げられる環境や事業サイドの下請けのような立場になっている環境ではそれを継続することは難しくなります。本書で登場する 5 社では現場のエンジニアが当事者意識を持てるような、後押しするような環境になっているのだろうということを感じました。
本:Engineers in VOYAGE - 事業をエンジニアリングする技術者たち|hidenorigoto|note
ソフトウェアエンジニアのモチベーションの源泉というのは人によって様々ですが、「事業に貢献する」ことに強くモチベートされる方が、偶然私の周りには多くいます。「Engineers in VOYAGE - 事業をエンジニアリングする技術者たち」は、そういう種類のソフトウェアエンジニアが読むと、この会社で仕事したら楽しいだろうな!と思わせてくれる本だと思います。
僕は似たようなものをたくさん見てきたから、あーこれはいい感じにチームが発展し、楽しみ・苦しみながらも文化資本が維持されていて、いいかんじに事業とエンジニアリングがエマルションしているなぁと感じることができるんだけど、ある種の人からしたらカルチャーショックかも。
— 広木 大地/ エンジニアリング組織論への招待 (@hiroki_daichi) August 28, 2020
Engineer in VOYAGE
— ところてん (@tokoroten) September 5, 2020
これは、エンジニアにとっては、上位の人材を惹きつけるための失敗を語る本である
非エンジニアに向けては、DXを達成した先の世界における働き方がありありと描かれており、DXがゴールではないことを教えてくれる#voyagebookhttps://t.co/dj6E4yqweChttps://t.co/lgWi3fq19e pic.twitter.com/W2lDnipVsw
書籍『Engineers in VOYAGE 事業をエンジニアリングする技術者たち』とは
本ブログによる発売エントリ
書籍「Engineers in VOYAGE 事業をエンジニアリングする技術者たち」が発売 #voyagebook - VOYAGE
- 本書内の「はじめに」を全文掲載しています。
本書の編者:和田さん (@t_wada)のブログエントリ
『Engineers in VOYAGE ― 事業をエンジニアリングする技術者たち』ができるまで #voyagebook
- 「はじめに」のはじめに、本書のきっかけ、インタビュー準備と本番、各章の読みどころ、本書へのさまざまな方からの感想などをまとめていただいています。
本書の編集者:鹿野さん (@golden_lucky) のブログエントリ
2010年代に日本のインターネットでいろんな事業をいい感じにやってきた会社から2020年代へのヒントをもらえる本を作った
- なぜ VOYAGE GROUP?なぜ t_wada?なぜ宇宙船?で、結局のところどういう本なの?など、鹿野さんの視点から本書を振り返っていただいたアツいブログエントリ。
本書の購入について
最後に
VOYAGE GROUPのエンジニアたちやエンジニアリングの文化に興味を持っていただけた方は、本書のインタビュイーたちともカジュアルに質問や情報交換などができる機会を設定したいと思いますので、以下のリンクからご応募いただけると幸いです。