
こんにちは、技術広報の @ShuzoN__ です。
今回は「1年カンファレンスを見張ってCfP 登壇10倍にした登壇文化形成」について書きます。と、言っても登壇者が1->10人 になった程度なのですが、思っていたよりも遠い道のりでした。
CARTAの場合は200人弱のエンジニアがいるため、ちょっとやそっとの施策や声がけでは全体に与える影響は大変小さく、少しずつ変化を生むだけでも地道さが必要でした。そこで2025年の1年で向き合っていたことについてお話していきます。
tl;dr
重要なのは以下の3点です。
- エンジニアの負担を減らし、参加のハードルを下げること
- 最初の数人を全力でサポートし、成功体験を作ること
- その姿を組織内に見せ、徐々に輪を広げていくこと
この記事で学べること
【ペルソナ】
- 登壇文化を社内に作りたいエンジニア採用人事・広報担当者
【想定ペイン】
- カンファレンス参加支援制度があるが使われていない、浸透していない
- 結果としてカンファレンス自体に登壇したり、コミュニティに浸透していくエンジニアが少ない
【実践方法】
エンジニアがカンファレンス参加する際の深度を徐々に深くすることで、カンファレンス参加をエンジニア組織に根付かせていていきます。
- カンファレンスの存在を認識してもらう
- 支援制度の活用促進
- 登壇サポートの実践
- 登壇文化の組織化
では、早速見ていきましょう。
1. カンファレンスの存在を認識してもらうことの重要性
まずはカンファレンスを認識してもらう
とにかくエンジニアたちにカンファレンスの存在を知ってもらうことが大切です。知らないものに参加はできません。
開催しているカンファレンスを認識してもらうと参加するエンジニアが数人現れます。この人たちを全力で応援していくと、その火種が組織に徐々に広がっていきます。
そのためには以下をメッセージングしていくと良いでしょう。
- 社として学習のために、業務中でもカンファレンスに行ってよいこと
- 支援制度の存在を知らせ、活用方法を支援すること
- 行くと何が起こるのか、何が学べるのかも同時に伝えること
観点としては「評価への影響」「金銭的コスト」「時間に対する見返り」を抑えていきます。すると「ああ、自分もカンファレンスに行っていいんだな」とカンファレンスに参加してくれるエンジニアたちが増えていきます。
既存リソースの活用
世の中には 公のカンファレンスリスト が存在します。また、Findyのカンファレンスサイト も有用です。これらをベースに「社内向けリスト」を作ります。ただし、単にカンファレンスをまとめてもそれだけでは有用に使えません。
状態管理による分類
実用的に使うため、カンファレンスを以下の3つの状態に分けて管理します。
- チケット販売中:参加したいエンジニア向け。カンファレンスに行けることを知らせる
- 登壇募集中(CfP):登壇したいエンジニア向け。プロポーザル提出のチャンスを知らせる
- スポンサー募集中:マネジメント層向け。スポンサード可能なカンファレンスを知らせることで、組織にとって必要な露出面に自覚的になってもらう
このように状態管理することで、今どのカンファレンスにどの方法でアクセスできるのかが一目でわかります。単にリストを作るだけでは見てもらえません。エンジニアの手間を減らすため、整形した情報をSlackに直接投稿します。

つまり、エンジニアが本来やるはずの情報収集を代わりに行うわけです。すると、その情報を見るだけでカンファレンス参加のきっかけを掴めるようになります。
2. カンファレンス支援制度の使い方をサポートする
会社にカンファレンス参加支援制度がある場合はそれを利用してもらいます。CARTAの場合はカンファレンス参加費、遠征費の支援制度があります。エンジニアたちが可能な限りカンファレンス参加しやすい体制を取っています。
よくある障壁
エンジニアによっては、以下のようなケースがあります。
- そもそも制度の存在を知らない
- 使い方を知らない
- 利用ガイドはあるが、想定されていない例外に遭遇する
こういった障壁でエンジニアたちは簡単に 「面倒だからいいや…」と参加をやめてしまいます。常に「困ったら自分がサポートする」という姿勢で個々に対応していくと、円滑に制度が利用されていきます。最初は大変ですが、ある程度続けていくとケースが溜まっていき、ほとんど過去事例を見せて解決可能になっていきます。
3. 登壇に興味を持ったエンジニアに登壇サポートを行う
カンファレンス自体に慣れ、エンジニアリングコミュニティに触れたエンジニアの中から、時々 「登壇にチャレンジしたい」 と言われることがあります。
登壇形式の2つのパターン

- スポンサー登壇
- プロポーザル経由の登壇
基本的にはプロポーザル登壇を薦めていきます。組織的にニーズがある領域の場合はスポンサー登壇も同時に検討していきます。組織ニーズについては現場エンジニアでは判断がつかない場合も多いため、そのエンジニアの上長・開発責任者に同時に提案します。
初登壇へのサポート
単に「プロポーザルを出しましょう」「登壇資料を作りましょう」といっても、初登壇のエンジニアにとってはなかなか難しいものです。このため、最初の1回目は一緒に中身や伝えること、ペルソナを考え資料作成をサポートしていきます。
一度登壇したエンジニアの大半は、登壇が終わった後、こう喜んでくれることが多いです。
大変だったけど楽しかった。サポートもあって心強かった。もう1回やってみようかな。
実際、数字は出していませんが、サポートしたエンジニアの大半は自発的にプロポーザルを出してくれるようになりました。
登壇を内外に見せる
また大事なのは 「登壇した人を尊ぶ、内部にそのトライを見せる」 ことです。
社内ブログやテックブログにその様子や資料を展開し、挑戦している人を内外に見せていきます。するとゆっくりと「自分もやってみようかな?」と思う人が増えていきます。
4. 登壇を組織の文化にしていく
ここまでの話は、負荷が採用担当・広報担当に極端に偏った話でした。ここからはどうやって組織化・文化にしていくかについて説明します。
文化形成の基本ステップ
文化を作るには以下のステップを踏みます。
- ひたすら挑戦する人を応援し、その姿を組織内に見せる
- 憧れや共感を生み、挑戦者が増える
- 学びはコミュニティを生み、コミュニティが自律的なサイクルを作る

まずは自分が、トライしようとするエンジニアを支援し、結果として「やってよかった」と思ってもらいます。そして社内にトライしているエンジニアの様子を見せていきます(1次ループ)。
すると「自分もやってみたいな」と思う人が増えていきます。その人を応援すると、徐々にトライする人が増えていきます(2次ループ)。
結果として、社内に登壇コミュニティが生まれたり、エンジニアが外部コミュニティに浸透したり、社内外の壁が薄れていったりします。その過程で、登壇コミュニティの中に暗黙知が生まれます。それが文化になって、新たな応援・挑戦を生んでいきます(3次ループ)。
すると、徐々に少しずつ手離れしていくんですね。これはCARTAにおいてもまだまだですが、兆しは十分見えてきています。
組織化への移行
個人の取り組みから組織的な仕組みへ移行するには以下のような流れを辿っていくと経験上良いです。
- 登壇支援チームの形成:広報・採用担当だけでなく、経験者エンジニアも巻き込む
- プロセスの標準化:プロポーザル執筆観点のマニュアル化、テンプレ共有、登壇練習会にて本人が所属するチームメンバーや類似チームのメンバーを呼ぶ
CARTAの場合は、私が入るだけでなく、技術コーチ( @soudai1025 氏, @t_wada 氏, 一部事業部 @shin1x1 氏) が週次でサポートに入っているため、彼らにも登壇サポートを行うように依頼しています。カンファレンスにおいて影響力のあるエンジニアから直接フィードバックがもらえることも成長機会であるため「そういうオトクさもあるよ」と伝えています。
番外編:組織的な課題がある場合の対処
ケース1:業務中のカンファレンス参加にメンタルブロックがある
組織文化的に業務中にいわゆる「業務」以外を行うことに強い抵抗感を覚えるエンジニアもいます。
この場合は本人の意思以前に、企業全体の文化や部署文化が理由だったりします。その場合は、その統括となる上位エンジニアやCTOと話し、方向性を握った上で「カンファレンスは行ってもいいものだよ」と繰り返し伝えてもらいます。すると徐々に参加率が上がっていきます。
人のメンタルブロックはなかなか簡単には外れないので、時間をかけてゆっくり変わって行く雰囲気を作るのが要諦です。
ケース2:外部イベント参加のハードルが高い
場合によっては「いきなり外部イベントに参加するのはハードルが高い」と言われることもあるでしょう。あと「行き方・過ごし方がわからない」という声も実際に聞きました。
そんな場合は、 社内に向けてカンファレンス登壇経験者の再演イベントを開催するのも効果的 です。
「こんな感じで楽しみましょう!」と類似したイベントを社内に作り一度経験してもらう方法もあります。シンプルに社内イベントとして質の高いものになりますし、仲間がやっている様を実際に見ると「自分もやってみたいな」と思う人が増えていきます。すると徐々にカンファレンス参加率が上がっていきます。
まとめ
文化形成はそもそも 時間がかかる取り組み です。最初からそう思っていれば根気強く向き合っていきます。
重要なのは以下の3点です。
- エンジニアの負担を減らし、参加のハードルを下げること
- 最初の数人を全力でサポートし、成功体験を作ること
- その姿を組織内に見せ、徐々に輪を広げていくこと
何かの参考になれば幸いです。



